実は、園田くんは釣りが好きなのらしいと、すぐに知った。
手慣れたようにルアーをつけ、ひゅんと音を立てて釣竿を振った。
そんな彼の横には、ちょこんと美月ちゃんが座っている。


「おっきいの釣ってね、あーくん」


なんて言っている様子を見ていると、二人で釣りに行くこともあったんだろうなと思う。


「園田くん、美月ちゃんがおっきいの釣ってね、だって」

「おうよ。任せとけ」


腕まくりをした園田くんが両手で釣竿を持つ。
美月ちゃんが「頑張れ!」と声を上げた。


「穂積くんは、釣りをしたことある?」

「あるよ。杏里と一緒に行くこともあるし」

「ほう」


見れば、穂積くんの手つきも慣れたものである。
男の子というのは、どこで釣りなんてものを覚えるんだろう。
私たちの住む町はそんなに大きな川もないし、海からも遠い。
釣り堀、はあるのかどうかも分からない。

そんなことを男の子二人に訊くと、「女がお菓子作りを覚えるようなものじゃない?」と返された。
あの、私、クッキーとか作れませんけど?
しかし、そんなことは言わずに、「へえ、そんなもんか」と呟くに留めておいた。
私がお菓子を作れないと知っている美月ちゃんは、クスクスと笑っていた。


それから何度か、美月ちゃんと短く体の交換をしながら釣りを楽しんだ。
私たちは、一匹も釣れなかった。

しかし、男の子二人はびっくりするくらいひょいひょいと魚を釣り上げる。
そうして、どちらの魚が大きいか、言い合いをするのだ。


「俺だろ、これは」

「さっき俺が釣ったやつが一番デカい。これは揺るぎないね!」

「はあ? それなら俺が二回目に釣ったほうのがデカいだろ」

「穂積はそれバラしただろ。釣り上げてなければ無効だ」


子どもの顔つきで口げんかをする二人は、見ていてとても楽しい。
私と美月ちゃんは顔を見合わせて笑った。