空のお弁当箱の入ったバッグを抱えて、部室に行こうとする私を呼びとめたのは、穂積くんだった。


「ヒィちゃん!」

「ん? あれ、どうかした?」


園田くんと一緒かと思いきや、一人だった。


「あのさ」


穂積くんは私を見下ろして、言い躊躇うように口を開け閉めした。


「なに?」

「えっと、あのさ」

「うん」


よく喋る穂積くんにしては、珍しい。何を躊躇うことがあるんだろう?


「えっと、園田くんとミィのこと?」


私が心配しているように、穂積くんもきっと心配してくれているんだろう。


「あ、それはまた今度ゆっくり話そう。今はその件じゃなくて。えっと、美月ちゃんは起きてる?」

「ううん、まだ寝てる。ミィに用事?」

「あ、いや違う。ヒィちゃんに。で、美月ちゃんは寝てくれてた方が今はいいんだけど」

「はあ」


穂積くんは頬を少し赤くして、「あのさ」と言った。
何回「あのさ」と言うんだろう。変なの。