「――っ!」


無理やり体の中央に引き戻される感覚がして、私は外の世界に戻った。

早いなあ。
もう二時間が過ぎたのか。


「……って、何? 手が痛……、ふお?」


どう言うわけだか右手の手のひらがじんじんと痛くて、そして頬には涙が伝っていた。何で?


「どうなって……って、園田くん⁉」


頬を拭っていた私は手を止めて、驚いた。
目の前に、頬を押さえた園田くんがいたのだ。


「な、なんで? どうなってんの? え?」

「あ。ヒィ、か……。そっか、美月、出ちゃったか」


はは、と乾いた笑みを見せて、園田くんは俯いた。


「出た……? え?」


園田くんの様子がおかしい。
腕時計を見たら、まだタイムリミットまで三十分もあった。


「美月ちゃんは……⁉」


きょろきょろと見渡す。
私と園田くんは、池を前方に眺められるベンチに座っていた。
そして美月ちゃんは、ベンチの裏側に広がる芝生の上に横たわって眠っていた。

私の体から抜け出て、すぐに眠ってしまったらしい。
その哀しそうな寝顔の瞳の端には涙の粒があって、ゆっくりと頬を伝った。

私は園田くんの腕を掴んで、捲し立てるように訊いた。


「園田くん、何があったの? 美月ちゃん泣きながら寝てるんだけど。そのほっぺた、叩いたの美月ちゃんだよね?」

「ああ。ヒィ、俺、バカだわ……」


園田くんが、額にこぶしを押し当てた。
全身でため息をつき、「ホント、バカだ」と小さく言葉を落とす。