あたしは、ため息をつくと言った。

「あのね、ちょっと用事あるんだ。悪いけど先に帰ってて」

「用事?」

「うん、ヤボ用でさ。ごめんね、また明日」
わざと元気よく言うと、あたしはカバンを手に廊下へ。

急ぎ足で指導室へ向かった。


指導室、正式名称『生徒指導室』は、1階の職員室のすぐ隣にある。

これまで入ったことはなかったけれど、意外に狭い部屋でテーブルと椅子が4つあるだけの簡素な部屋だった。

窓もないから圧迫感がある。

部屋には兼子先生と、そして……。

「千夏……」

千夏が座っていた。

ハンカチで目を押さえているのは、泣いているのだろうか?

「山本さん、座って」

兼子先生が向かい側の空いている席を指さす。