人が三人もいたら、思うように動けない狭い美術準備室。


「よし、俺に任せろ」


と、京介が、鏡を1枚1枚重ね始めた。


枠の付いた鏡は思ったよりも運びやすそうで、次々と鏡が片付いて行く。


その間、私と影宮さんは廊下に出ていたけど……今度は冷気が準備室の中から流れ出ているようだ。


つまり……今、ナニかは準備室の中にいる。


京介はそれに気付いていないようだけど……もしも布が落ちてしまえば、間違いなくナニかを見てしまう。


「きょ、京介、気を付けてね」


私がそう言うと、小さく頷いて再び鏡を移動させようと手を伸ばした。


一歩、京介が踏み込んだその時……床まで垂れた白い布を踏んでしまい、「あっ」と声を上げた時には、布がゆっくりと床に落ちてしまったのだ。


私も影宮さんも、声を上げる事すら出来ずに……。












「な、なんだよ……裏かよ。驚かせやがって」









鏡面が現れた……と、思われた鏡は、運良く裏を向いていたようで。


フウッと吐息を漏らした京介は、袖で額を拭った。


「後は……一つだけだな。今度は気を付けねえと」


そう呟いて、最後の鏡を持った京介は……不思議そうに首を傾げた。