「メ、メンテナンスってちゃんとしてるのかな」

萌絵の声に振り向くと、小さい体をさらに縮こませている。

「大丈夫だよ」

優しい駿の声が耳に届く。

「でも、バランスとるためにさ、みんなつめずに間を空けて座ったほうがよくない?」

萌絵。

「大丈夫、ちゃんと考えて作られているから」

背中越しの会話が恋人同士のように聞こえる。


振り向きたいけれど、そんな勇気がない。

「おい、早く動かせよ。誰か来ちまうだろうが」

ふたつ前の席の雅哉が怒鳴った。