「どこにもないよ」

陽菜が七海の注文に答えようと、必死で探す。

「うわ!」
突然、後ろに立っていた駿が大きな声を出した。


振り向くと、駿のすぐ後ろにクマがいた。

いや、よく見るとクマの着ぐるみだった。

白いシャツと青いズボンをはいている。

「ひゃあ」

気の抜けた声を上げた萌絵がダッシュで離れる。

「なんだ、『夢くん』かぁ」

陽菜がホッとした声を出して胸をなでおろした。

「夢くん?」

駿がまだ体をのけぞらせながらいぶかしげに尋ねた。