「逃げる?」

駿がそう尋ねると、
「ええ」
と、当たり前のように紗栄子は言った。

「逃げるなんて許さねぇ」

雅哉が言った。

有無を言わさぬ迫力は声だけでも十分伝わる。

「逃げはしないでしょ。その後のほうがもっと怖いじゃん」

七海がケラケラと笑った。

「そうだよ。ありえないし」

陽菜も、同意した。


そして、沈黙。


「俺、なんか興奮してきた」

雅哉の声は確かに上ずっている。

そういう時には歯止めがきかないことを、みんな知っていた。