「行っちゃだめだ」

「えっ? でも、雅哉君が」

「だめだ」

駿が首を振った。

そして、声をひそめて言う。

「覚えているだろ? みんながどうなったか」

「でも・・・」

駿が言うこともよくわかる。

でも、このままほっておいていいものなの?

そうこうしているうちに、雅哉の姿が見えた。

少女の場所からはまだ壁1枚隔てている。

「んだよ!」

悔しそうに頭を振ると、また見えなくなった。

少女は、聞こえていないのかゆっくりと歩いてゆく。