懐中電灯の明かりが、誰もいない園内を照らす。

時折、見えるコーヒーカップやメリーゴーランドが、薄暗い中で不気味さを演出している。

そのたびに足がすくんで動けなくなる。

「もう、やだ・・・」


その時、向こうから懐中電灯の明かりが近づいてくるのが見えた。

先に歩いていた下沼さんだろう。

きちんとルート通り歩いてきたんだろうな。

萌絵は感心すると同時に、あきれた気持ちになった。

そういうマジメさが下沼さんらしいけれど、それがまたボスたちには気に喰わない原因かもしれない。


こっちに近づいて来る光は、右へ左へせわしなく揺れ動いている。


きっと、小走りで駆けているのだ。