また笑い声を上げた萌絵が、口を開く。


「あの子の名前は、下沼さん」


しもぬま・・・。


その名前を聞いた時、私の脳裏に一瞬で浮かんだ顔。

まったく思い出せなかったのがウソのように、彼女の顔が浮かんだ。

そう、下沼さんだ・・・。

「下沼さん・・・。確かにそうだ」

唖然としたように駿が口にした。

「私も、思い出した」

同じように言う。

雅哉は眉をひそめながら、
「下沼・・・。ああ、あいつか」
とつぶやいた。