回転はゆっくりで、回りながらも馬や馬車たちは上下している。

夜には似つかわしくないクラシックが、これから何か起きるのではないかと不安にさせる。

のんびり回るメリーゴーランド。

陽菜と紗栄子があんな目にあったのに、のん気に乗っていていいの?

ふと、視界がなにかをとらえた。

そちらに目をやる。


「あ」


見間違いかと思い、もう1周するまで待って確認する。

間違いない。

「ねぇ、あれ、見て」

隣の萌絵に言う。

「イヤだ。やめて、見ないっ」

「違うの。ほら、あれキャラクターのぬいぐるみじゃない?」

名前も忘れてしまったけれど、入り口にいたクマの着ぐるみが外の柵越しに立っている。