後は明日香達に任せるだけだ。
いろんな事を思い出して、やっと泣けるよ。
泣く暇も惜しんで、誰が死んでも前を向いて進んでいたけど……もう良いんだよね?
「右だろ! 分かってるぜ! 良いぞ龍平!!」
突然飛び出したその名前に、私は思わず武司の方を見た。
もう名前を聞くこともないと思ってたのに……。
二度と会えないと思ってたのに……。
「赤い人」と戦う武司の隣に、龍平の姿が見えて……。
今まで我慢していた涙が、ポロポロと溢れ出したのだ。
「龍平……」
私がそう呟くと、そこにいるはずのない龍平が、振り返って笑いかけてくれたような気がして……私は声を上げて泣いた。
「赤い人」に心臓を返して、しばらくすると武司の動きが止まった。
「何だ? こいつ。ブルブル震えてやがるぜ?」
美紗が言っていた、浄化が始まったのだろうか。
涙を拭って、棺桶の中の美子を見てみると……あれだけきれいだった肌が、枯れた木のようにボロボロに朽ちていって……。
音もなく、サラサラとした砂に変わり崩れ落ちたのだ。