「ハァ……ハァ……おえっ! あ、あんた……足速過ぎ!」


逃げるためとは言え、強引に引っ張られて走った校舎。


不安と疲労で、何度も吐きそうになった。


「ふぅ……さすがにあせったぜ。まさか、いきなり匂いを嗅ぐなんてよ。留美子の匂いがきつかったんじゃね?」


「バ、バカな事言わないでよ……私はそんなに体臭きつくないっての!」


「でもよ、赤い人は最初は遊んでたのに、途中で匂いを嗅いだだろ? だったら、誰かの匂いに気付いたんだって、たぶん」


そういえば……確かに最初は私達がいる事に気付いてなかったな。


ま、ピンチから脱出した今となっては、どうでも良いんだけどね。


要するに、見つからなきゃ良いだけの話よ。


「って、あんたいつまで手を握ってんのよ!」


慌てて龍平の手を振りほどいて、制服で手汗を拭く。


何でこんなに濡れてるんだか……。


「仕方ねぇだろ。とりあえずよ、準備室を調べて来るから、留美子は赤い人が来ないか見ててくれよ」