【悲報】異世界転生した救急救命士のチート能力、女性専用車両並みに男性お断りだった件

「女神様、僕は生前凄く不幸だったので生まれ変わるならば裕福な親のもとに転生させてください」

「女神様、私は何も悪い事をしてないのに周りが私を責めてきて、やりきれなくなったので自ら命を断ったのです。生まれ変わるならば周りを黙らせる力を持って生まれてきたいです」

「女神様ーーー。
 女神様ーーー。
 女神様ーーー。」

「あー疲れたわ。まったく女神使いが荒いったらないわね」

 ――ここはあまたの神々が集う世界。

 ナオキに能力(スキル)を与えて転生させた女神もそこで魂の管理に追われていた。

「はい、あなたはそのまま右の扉に入ってね。輪廻の輪に入る事によって同じ世界に生まれ変わる予定ですから」

 女神は手元の記録帳を見ながら送られてくる魂の記録を次々と照合していった。

「だけど本当に最近の子達は自分の事を最優先に考える子ばかりでつまらないわね。さっきの子も万能な能力(スキル)を望んでいたし、とにかく人の上に立ちたい願望が強すぎるのよね。そんな子達に過剰な能力(もの)を与えると世界のバランスが壊れてしまうからほどほどにしなくちゃね」

 女神はそう呟きながら条件に見合った人の魂を選別していく。

「そういえば、前に少しばかり強めな能力(スキル)を与えた子が居たけど上手くやってるかしらね。本人が望んだからかなり限定した方法でしか発動しない能力(スキル)を形成したけど、ちょっとやりすぎたかもしれなかったわね」

 女神は選別の手を止めて空間に手を振りかざすとモニターのように映像が映し出された。

「――彼(か)の者の傷を癒やし給え、完全治癒(ヒール)」

 そこには数多(あまた)の患者を治療するナオキの姿があった。

「ほう……。あの特殊な条件の能力(スキル)を使いこなすのですか……。ひとつ間違えば社会的地位を剥奪されかねない能力(スキル)だと思っていたけど、いやいやどうして世間から受け入れられているのね」

 女神が感心していると……。

「どこ触ってるのよ! この痴漢! 変態!」

 パシーン!

「絶対にわざと胸に触ってるでしょ!」

 患者の女性が声を荒らげてナオキに罵声を浴びせる。

 だが、頬(ほお)を叩かれたナオキは怒る事もせず、狼狽(うろた)える事もせずに優しく患者に微笑むとゆっくりと口を開いた。

「それは誤解ですし、治療方法に関しては先程リリス……いえ、彼女から説明されて納得した上でこの場にいらっしゃると認識していたのですが……」

 患者の女性はキッとナオキを睨(にら)むと「大体、なんで胸側な訳? 背中からでも治療は出来るんじゃないの!?」とまくし立てた。

「すみませんが、それについては以前試した方がいらっしゃいましたが上手く治療が出来ませんでしたのでその後は今の治療方法のみで治療をさせて頂いております」

 それなりによくある事例なのだろう、彼は特に慌てる事もなく淡々と説明を繰り返し、患者を説得していった。

 女性の質問にひとつずつ答えを返して最終的には「この説明で納得出来ないのであれば治療費はいりませんのでお引取りください」との結論に至る。

 そして、ほぼ全員がしぶしぶながらも治療方法を承諾する事になる。

 他所(よそ)に行って治らないのだから四の五の言ってられないはずなのだがやはりそこは女性であるからには仕方ない事だろう。

「………し、仕方ないわね。ただし、触っていやらしい表情を見せたらまた叩くからね」

「どうぞご自由に……。では治療を続けさせて頂きます」

 彼はそう言うと真剣な表情で患者と向き合った。

「――ふうん。なかなかやるじゃないの。初めて会った時の魂の熱さはチートな能力(スキル)を得て、さらに熱く燃え盛っているわね。これならば能力(スキル)を悪用する事は無さそうね。もっとも、悪用したら全て自分に跳ね返ってくる諸刃の剣な能力(スキル)だったのだけど、そう言えばそういった説明をするの忘れてたかもしれないわね」

 女神は微笑むと映像のナオキに向かって手をかざし、何かを呟いた。

「真面目にやってるようですし、もうひとつ加護を与えておきましょうか。あなたの能力(スキル)ではあなた自身は治せないので、いつかあなたが必要とした時にあなたと同調する人が救いになるように……」

 そう呟く女神の手から桜色の小さな光が映像の中に吸い込まれていった。

「まあ、面白そうだから時々は彼の様子も見てみる事にしましょう。あまり直接的な支援は出来ないルールですが、なんとなく彼は他の魂とは違って私を楽しませてくれそうな予感がしますからちょっとだけ特別でも良いわよね」

 女神はそう呟いて腕を上げて大きく伸びをして次々と送られてくる魂の選別に戻っていった。

 この女神の気まぐれがナオキの運命を大きく左右する事になるとは思いもしなかった。