転生したらHP10000だった。


 カルヴァ王国の王都まで、最短距離で約五日。
 魔物には何度か襲われたけれど、無事にシーニャンさんとその侍女さんも連れて帰還することができた。
 まずはどうしたらいいのかな、と思ったら、サリィが「一度公爵家に戻り、陛下に帰還と結果のご報告をしたいので、何日にお窺いすればよいですか? とお伺いを立てなければならないのですよ」と教えられる。
 そっか、それもそうだよね。
 王様はめっちゃ忙しいもんね。
 私の用事をその忙しい中、会って報告しなきゃいけないから、時間を作ってもらうんだ。

「生意気だなー。たかだか一国の国王如きが、私の出迎えもしないなんて」
「無茶をおっしゃらないでくださいませ、シーニャン様。カルヴァの国王はシーニャン様が来訪しておられるのを、そもそも存じ上げないのです。そんなことをおっしゃるのなら、事前に来訪の日時を王家に通達しておけばよかったではないですか」
「それは面倒」
「も、もう……まったく。せめて公爵家には事前にシーニャン様が行くことを告知しておければよいのですが」

 と、言ってシーニャンさんの侍女さんはサリィの方を見る。
 それに対してサリィは「手紙で連絡はしております」とすまし顔で返答。
 侍女同士が謎のアイコンタクトを決めた。

「俺もシーニャンの護衛ってことで滞在中は世話になってもいいかい?」
「もちろんでございます。アルド様のお知り合いの冒険者であり、ここまで護衛してくださったのですからどうぞごゆっくりなさってくださいませ。本当にゆっくりできるかどうかはわかりかねますが」
「ひどいこと言うなぁ」
「ははははは! 確かになぁ! 弟子の目の前でだらだらなどできんだろう! それに、確かカルヴァ王国騎士団には旧知がいるのではなかったか?」
「げっ……なんで知ってるんだよ。怖ぇなぁ……」
「きゅうち?」

 きゅうちってなんだろう?
 チキン?
 サリィが首を傾げる私に「旧知とは、昔からのお知り合い、お友達のことをいうのですよ」と教えてくれた。
 へー、昔からのお友達かぁ。

「せっかくカルヴァ王国の王都に来ているのだから、会いにいけばいいのではないか?」
「公爵家の騎士に任せていいなら、まあなぁ」
「カルヴァ王国の騎士の制服はかっこいいぞ、イリヤ」
「かっこいいの? 見てみたーい」
「シーニャン様! お嬢様に変なことを教えないでくださいませ」



 そんな話をして平民街から貴族街に入ると、公爵家の私兵が五人ほど迎えに来ていた。
 サリィが事前に連絡しておいてくれたおかげで、私たちはスムーズに家に帰れるみたい。
 なんで思っていた時期が私にもありました。

「お嬢様! 裏口から屋敷にお入りください」
「え? なんで?」
「お客様がいらっしゃるのに、旦那様やお兄様方のアレなおかおを見せるわけにはいかないとの奥様からのお達しです」
「わかりました。お嬢様、ここからは我々だけ裏口に回りましょう。シーニャン様、モーリス様とともに正門からお入りください」
「「……?」」

 シーニャンさんとその侍女さん、モーリスさんは騎士二人に連れられ正門側へ。
 私とサリィは三人の騎士たちと裏門に回った。
 私は本当になんでだかわからない。

「なんでイリヤ、とーしゃまやかーしゃまやにーしゃまたちにすぐあえないの?」
「お許しください、お嬢様。すべては旦那様たちの尊厳に関わることなのです」
「そんげん? そんげんってなぁに?」
「旦那様たちが日々積み上げて来た、周囲からの信頼……でしょうか。とても大切なものなのです」
「よくわかんない。わかんないけど……わかった」

 なんか大変なんだろう。
 サリィの目が、真剣そのものなんだもの。
 それに、裏口から入るのは初めての経験。
 こんなこと、これが最初で最後かもしれないじゃん!
 こんな機会、しっかり楽しまないと損じゃない?

「はやくおへやかえりたーい」
「長旅でしたものね」
「ううん。グレンおーじにかえっつてきたよっておてがみかくの」
「ひぐっ!」

 ひぐ?
 振り返ると、サリィは天を仰いでいた。
 なんで?
 私が乗っている馬はサリィが手綱を握っているのだが、それでは前が見えないのでは?
 前と後ろを固めてくれていた騎士たちも、なんか引いた顔をしている。

「……わかりました。お嬢様は、本気で……っ」
「ど、どうしたの? サリィ」
「な、なんでもございません……! これもひとえにお嬢様の成長……! サリィは、サリィは……お嬢様がそこまで王子殿下を想っておられるのであれば……っ!」
「お、お嬢様。馬はこちらでお預かりします。先にお部屋に戻って、どうぞごゆっくりとお休みください」
「あ、はい。ありがとう」

 騎士さんたちもどことなく苦笑い。
 馬から下され、サリィと手を繋いで裏口からお屋敷に入る。
 事前に決まっていたのか、裏口は厨房に繋がっておりシェフとキッチンメイドたちが頭を下げてきた。
 この人たちがいつも私に美味しいご飯を作ってくれているのね。

「いつもおいしいごはん、ありがと!」
「なんと! ありがたきお言葉です」
「お着替えがお済みになりましたら、すぐに美味しいおやつをお持ちいたしますね」
「わーい! まってるね!」

 やった! おやつ!
 早くお部屋に行って着替えよう!