「ここが女神神社よ。お参りの仕方を教えるから、しっかりと覚えて帰りましょうね」
「はあい!」
熱が下がり、お城での事件後五日目。
母様に王都の女神神社なる場所へ連れてきてもらった。
見た目は本当に神社。
前世で見たことのある鳥居が階段の入口にあり、鳥居を潜ったら階段の端の方を歩く。
なぜなら本殿から鳥居までの道は神様の通り道。
女神様が時折降り立って、この鳥居から真ん中を通って本殿へ向かう。
加護のない人間に女神様の姿を見ることは叶わないが、未知の端っこを歩かなければ女神様のお通りを邪魔することになってしまうんだって。
そして本殿の前についたら、設置してある井戸で水を汲み、手を洗って口を濯ぐ。
鳥居の外から来た人間はここで穢れを落としていかなければならない。
魔獣と接する機会の多い人間は女神様が過ごされる神社に入る時しっかりとその穢れを落とさなければ、穢れを持ち込むことになる。
身を清めたら賽銭箱のあるところに立ち、二拝。
「こうして神様がいる場所に向かって、頭を二回下げるの。これを二拝。次に二回手を叩く。そして最後にもう一度頭を下げる。できたかしら?」
「できました!」
へー、参拝ってちゃんとルールがあったんだ。
もしかして前世の世界にもこういう参拝方法があったのかな?
前世は教えてもらうこともなかったけれど……。
「お賽銭――お布施はあとで宮司に直接渡しましょうね」
「ぐーじ?」
「神社を管理する人よ。平民はさっきお辞儀した場所にある賽銭箱に入れてお祈りをするのだけれど、わたくしたちのような貴族は金額が大きいから、宮司に直接手渡すの」
「そうなんだ」
手を繋ぎ、母様とともに宮司のいるという屋敷の方へと向かう。
なんだかアンバランスな世界観だ。
私たち貴族の振る舞いは外国のようだけれど、女神様にまつわるところは前世の世界によく似ている。
迎えてくれた宮司さんと、巫女さんは女神様に仕える正装として袴姿。
「かわいい! きもの?」
「まあ、よく知っているわね。そうよ、女神様に仕える者は“装束”という着物の一種を着ているの。彼らは神に仕えるために様々な階級にわかれ、日々女神様に祈りを捧げているのよ」
「へー」
「サリィ」
「はい。宮司様、こちらお布施となります。どうぞお納めくださいませ」
「ありがたく頂戴いたします……! それで、お嬢様は星の精霊の加護をお持ちだとか」
「ええ、それを調べてもらいに来たのです。鑑定士によれば、顕現していない星の精霊に関しては神社でなければわからないと言われて」
「わかりました。詳しく調べてみましょう。中へどうぞ」
宮司さんに促され母様とともに屋敷の中に。
このお屋敷はさっきお参りしたところとは違うみたい。
でも、太鼓や神棚の豪華版みたいなものがいっぱい飾ってある。
「こっちのほうが、キラキラ」
「ははは。先ほどの建物は拝殿という神に直接拝謁して祈りを届けるところです。こちらは本殿。神事、という儀式を行う場所です。年間でさまざまな儀式を行うので、一般人は立ち入り禁止なんですよ」
「へーーー」
廊下を歩き、とある一室に案内された。
そこはまるで資料室。
飾りや古い書物が展示してある。
これは、ティアラ? こんなものまであるんだ?
「こちらの壁画をご覧ください」
「まあ」
宮司の差した方を見ると壁に石版が設置してあった。
真ん中に女神様らしき小さな女の子。
女の子の周りには、大きな黄色い星が左右に四つずつ。
「こちらの星々が女神様を支える八つの星の精霊です。八つの星の精霊は女神を支え、守る存在。そのうち右の四つは現世に顕現し、人類の守護をしてくださっております。女神様は信仰心を捧げることで安定し、世界をお守りくださるのです。そして、此度、お嬢様が授かったという星の精霊は現世に顕現しておられぬ四精霊のどれか、と思われます」
「ええ。その四精霊について、教えていただきたいの。そして、可能ならば、その四精霊のどなたが娘に加護を与えてくださったのかを知りたいわ」
「お調べしましょう」
そう言って宮司は事前に用意していたらしい文字がいっぱい描いてある板を持ってきた。
なにこれぇ?
方角とか、いっぱい書いてある。
「これは?」
「羅針盤の一種です。四神のことをご存じならば、なんとなくはおわかりいただけると思いますが『星の精霊』というのは女神様を讃え、四神様を含めた天上の四神を畏れ多い呼び方なのです」
「……つまり、女神様のお側にいる他の四精霊というのも……神、なのね?」
「その通りでございます。しかし、我が国を含めこの世界、ブロントズウェールは女神様の単独神を信仰するもの。四神は女神様に使える神であると、四神が自身で申しておりますが天上の四神はそうではないと言われております。天上の四神は、女神様よりも神格の高い神であるという説があるほどなのです」
「なっ……そ、そんな……!?」
なんか難しい話をしている。
しかし、私に加護を与えてくれた精霊様がすっごいのはなんとなくわかるぞ!
どんな精霊様なのだろう?
早く調べてほしいな。
「それは……王家に知られたら……。い、いいえ。加護についてはちゃんと調べなければ。ともかく、知らなくては対処もできないわ。イリヤ」
「はい。おかあしゃま!」
