隣の席の大型犬みたいな男がぐいぐいくる

♡広川のひとりごと♡

夜中、ふと目を覚ました。
天窓のむこうに大きな満月が浮かんでいた。
白い光が眩しい。

ああ、だから目が覚めたのか。

オレはぼんやりと体を起こした。
静かだ。なんの音もしない。
一階のメンツもみんな寝てるんだろう。
隣から、すうすうと規則的な寝息が聞こえてきてドキッとする。
人ひとりがようやく通れるくらいの隙間を挟んだ向こうのベッドに、レンがいる。

……レン。

こちらに背中を向けて、子供のように体を丸めている。ふわふわの後頭部。細い、半袖を着た剥き出しの腕を布団の上に出している。柔道をしていたなんて信じられない。

オレは思わず見てしまって、それから、目を反らした。
でも、やっぱり吸い寄せられてしまった。
誰にも気づかれないなら見てもいいんじゃないか、なんて……。
レンの髪を、首筋を、細い腕を見ていた。

神社の話をしてきたレンに、ヤッてる声じゃね?と言ったら真っ赤になっていた。

肝試しでは、ギャーギャー騒いで飛びついてきた。
『ひろか、ひろかっ! いやーっ!』……って。
思い出すと笑える。高1の男でこれか。

胸に顔をぴったりとくっつけてきたから、女の子にするみたいに抱きしめようとして……手は空中で止まった。
男だしな。
抱きしめるのは変だろ。レンだって嫌だろうし。

神社で振り向け!と願ったら、振り向いた。
と思ったら、また飛びついてきたから、体勢を崩してしまった。
オレが押し倒すような格好で、レンが尻もちをついた。すぐスッと立ち上がったから、ケガがなくて良かったと、そのときはそれしか思わなかった。

でも、キス……しちゃってたんだよな。
レンの唇に血糊がついているのを見て焦った。

唇が触れたのはわざとじゃない。
でもさ。

オレはちらっとレンを見た。布団がかすかに上下しているだけ。
顔は向こうを向いていて見えない。

「ん……」

レンが寝返りを打った。
オレは慌てて布団に潜った。けど、レンはこちらを向いただけで起きなかった。
オレは布団から顔を出して、目の前の可愛い寝顔に目を凝らす。口は、めちゃくちゃ悪いのにな。

別に、レンじゃなくてもいいじゃないか。
女の子、いっぱいいるんだから。可愛くてオレのことを好いてくれる子。

でも……。

手を伸ばして、レンの前髪をそっと払う。
起こさないように、起こさないように。

ーー『広川でよかった』

その言葉が嬉しくて、ずっと胸の奥が痺れている。

もし女の子だったら、絶対口説くのにな。