取材、なんだそうだ。
事前に何も知らされてなくて、事務所に来たら、なんか廃倉庫みたいなところに連れて行かれてメンバー集合の写真を撮って。
で、事務所に戻ってきて。
「MVを拝見したけど、僕はKIRI君の声、とっても好きだよ。明るくて好感が持てます」
「ありがとうございます」
会議室の長机にみんな横一列に座らされ、もちろん藤堂さんもいて、そしてレコード会社の高宮さんもいて、向かいに眼鏡をかけた温厚そうなおじさん……というのは失礼かもしれないけど高宮さんぐらいの年齢だろう(高宮さんの年齢は知らないけど)男性が座っている。
俺の声を褒めてくれたのはもちろんこの人。
プロフィール非公開だの顔見せNGだの言う割には、おそらく部外者だろうこの人に俺なんかセンスの欠片もない私服姿で普通に顔を見せてるけど。
まあ、この界隈の人以外には、ということなのだろう。そうじゃないと仕事にならないし。
「SINONOME君はしっとりしてて耳に心地良い感じ。藤堂さんも良い子たちを見つけてきましたね」
「恐れ入ります」
一番端に、俺の隣に座っていた藤堂さんは頭を下げた。
「では今回のミニアルバムのコンセプトをお聞きしたいのだけど、RIN君でいいのかな」
「はい、僕が答えます」
というやり取りが始まり。
「ありがとうございました」
その一時間後、エレベーターまで見送るという藤堂さんと高宮さんと、記者?のおじさんが部屋を出ていくまでみんなで立ち上がって頭を下げた。
バタンとドアが閉まった途端、どすんと不機嫌そうにパイプ椅子に座り直した飛鳥さんが口を開いた。
「今日、取材入ってるって俺知らなかったんですけど」
「みんな知らなかったんじゃない?」
受けたのは瑞希さんで、一人一本ずつ配られていたお茶のペットボトルをごくりと飲んだ。
「うん、俺と凛もここに来てから藤堂さんから聞いたよ。もう松井さんが来てるっていうからみんなに話をする時間もなくてね」
松井さん……そう言えば、そう名乗ってたっけ、あの記者おじさん。
「松井さんは音楽系のライターさんだよ、歴も長くて有名な人。高宮さんの古くからの知り合いみたいだね。雑誌の連載を持ってて、そこで俺たちを紹介してくれるみたい。枠が急に空いたらしくて」
東雲さんが多分何もわかっていない俺に説明してくれた。ライターさん、というのか。記者じゃなくて。
「松井さんって高宮さんの知り合いなんですか」
海斗さんが興味津々というよりは、静かなトーンで訊く。東雲さんの言葉に何かひっかかりを感じた、のは多分凛さんと東雲さん以外みんなだ。
「らしいよ」
うん、と東雲さんは頷く。
「急に空いたってことは、空けてもらったってことですか?」
「海斗、そこはさ」
瑞希さんが海斗さんの顔をじっと見て。やんわりと止めたのだろうと思う。
「隠すほどのことでもないから言うけど、本当はウチの事務所の、大先輩の新譜レビューの予定だったらしい。高宮さんがねじ込んだというか、次の号へずらすのを了承してくれたみたいだよ。その大先輩、デビュー当時は高宮さんが担当だったらしくて」
東雲さんが「いきなり取材」の種明かしをしてくれた。円満に譲って貰った、ってことでいいのかな。
「もしどこかでお会いしたらお礼とか言うべきなんですか?」
ふと疑問に感じて訊いてみる。
会うことがあるのかどうかはわからないけど、向こうはこの件をわかってるわけで。まあ、俺たちを認識してくれてるか、そこからの話ではあるけど。
「藤堂さんと大先輩のマネージャーさんとでちゃんと話がついてることだから俺たちが雁首揃えてっていうのは控えるべきだと思うが、何かの機会があればカジュアルにお礼言ってもいいかもな」
ずっと黙って聞いていた凛さんがくしゃっと、俺の頭を撫でた。……俺の頭って、撫でやすいのだろうか。何かとよく頭をくしゃくしゃされる。
「書いてくれる松井さんや譲ってくれた大先輩にがっかりされないようにしっかり頑張ればいいのよ、樹」
「はい」
瑞希さんの言う通りなのだろう。貰ったチャンスは必ず活かす、それで恩返し。
事前に何も知らされてなくて、事務所に来たら、なんか廃倉庫みたいなところに連れて行かれてメンバー集合の写真を撮って。
で、事務所に戻ってきて。
「MVを拝見したけど、僕はKIRI君の声、とっても好きだよ。明るくて好感が持てます」
「ありがとうございます」
会議室の長机にみんな横一列に座らされ、もちろん藤堂さんもいて、そしてレコード会社の高宮さんもいて、向かいに眼鏡をかけた温厚そうなおじさん……というのは失礼かもしれないけど高宮さんぐらいの年齢だろう(高宮さんの年齢は知らないけど)男性が座っている。
俺の声を褒めてくれたのはもちろんこの人。
プロフィール非公開だの顔見せNGだの言う割には、おそらく部外者だろうこの人に俺なんかセンスの欠片もない私服姿で普通に顔を見せてるけど。
まあ、この界隈の人以外には、ということなのだろう。そうじゃないと仕事にならないし。
「SINONOME君はしっとりしてて耳に心地良い感じ。藤堂さんも良い子たちを見つけてきましたね」
「恐れ入ります」
一番端に、俺の隣に座っていた藤堂さんは頭を下げた。
「では今回のミニアルバムのコンセプトをお聞きしたいのだけど、RIN君でいいのかな」
「はい、僕が答えます」
というやり取りが始まり。
「ありがとうございました」
その一時間後、エレベーターまで見送るという藤堂さんと高宮さんと、記者?のおじさんが部屋を出ていくまでみんなで立ち上がって頭を下げた。
バタンとドアが閉まった途端、どすんと不機嫌そうにパイプ椅子に座り直した飛鳥さんが口を開いた。
「今日、取材入ってるって俺知らなかったんですけど」
「みんな知らなかったんじゃない?」
受けたのは瑞希さんで、一人一本ずつ配られていたお茶のペットボトルをごくりと飲んだ。
「うん、俺と凛もここに来てから藤堂さんから聞いたよ。もう松井さんが来てるっていうからみんなに話をする時間もなくてね」
松井さん……そう言えば、そう名乗ってたっけ、あの記者おじさん。
「松井さんは音楽系のライターさんだよ、歴も長くて有名な人。高宮さんの古くからの知り合いみたいだね。雑誌の連載を持ってて、そこで俺たちを紹介してくれるみたい。枠が急に空いたらしくて」
東雲さんが多分何もわかっていない俺に説明してくれた。ライターさん、というのか。記者じゃなくて。
「松井さんって高宮さんの知り合いなんですか」
海斗さんが興味津々というよりは、静かなトーンで訊く。東雲さんの言葉に何かひっかかりを感じた、のは多分凛さんと東雲さん以外みんなだ。
「らしいよ」
うん、と東雲さんは頷く。
「急に空いたってことは、空けてもらったってことですか?」
「海斗、そこはさ」
瑞希さんが海斗さんの顔をじっと見て。やんわりと止めたのだろうと思う。
「隠すほどのことでもないから言うけど、本当はウチの事務所の、大先輩の新譜レビューの予定だったらしい。高宮さんがねじ込んだというか、次の号へずらすのを了承してくれたみたいだよ。その大先輩、デビュー当時は高宮さんが担当だったらしくて」
東雲さんが「いきなり取材」の種明かしをしてくれた。円満に譲って貰った、ってことでいいのかな。
「もしどこかでお会いしたらお礼とか言うべきなんですか?」
ふと疑問に感じて訊いてみる。
会うことがあるのかどうかはわからないけど、向こうはこの件をわかってるわけで。まあ、俺たちを認識してくれてるか、そこからの話ではあるけど。
「藤堂さんと大先輩のマネージャーさんとでちゃんと話がついてることだから俺たちが雁首揃えてっていうのは控えるべきだと思うが、何かの機会があればカジュアルにお礼言ってもいいかもな」
ずっと黙って聞いていた凛さんがくしゃっと、俺の頭を撫でた。……俺の頭って、撫でやすいのだろうか。何かとよく頭をくしゃくしゃされる。
「書いてくれる松井さんや譲ってくれた大先輩にがっかりされないようにしっかり頑張ればいいのよ、樹」
「はい」
瑞希さんの言う通りなのだろう。貰ったチャンスは必ず活かす、それで恩返し。
