「むっ、そこの者……あっ、タルム様でしたか! これは失礼しました、どうぞお通りくださいませ」
「うむ、いつも警備をご苦労様じゃのう。すまぬがまたお邪魔させてもらうぞ」
「はは!」
「………………」
タルムさんが王宮跡地へ入ろうとすると警備の者たちが前に出てきた。
しかし警備の者たちがタルムさんの確認すると、すぐに頭を下げてタルムさんを王宮跡地の中へと案内し始めた。
……タルムさんが偉い人だとは予想していたが、まさか王宮跡地にも入ることができる権限を持っていることまではわからなかった。
「いったいタルムさんは何者なんだ?」
あまり聞きたくはなかったが、こうなってしまえば聞いておかなければならない。この国の王族とか言われたら、さすがに今後の付き合いをいろいろと考えることもある。
「昨日も言ったが、すでに引退したただのジジイじゃよ。ちょっと他の者よりも魔法に詳しいくらいじゃから、ガクト殿が気にする必要などはないぞ」
「なにを仰いますか! 賢者であるタルム様の名を知らぬ者などこの国にはおりませんでしょう!」
「これこれ。すでに引退した身じゃし、余計なことをガクト殿に言う必要はないのじゃぞ」
「し、失礼しました!!」
「………………」
屈強な警備の騎士の男が深く頭を下げる。
賢者ときたかあ……。
この異世界での賢者の称号は特別な意味を持つ。ここでは魔法を使える者を魔法使いと呼ぶのだが、魔法を極めた者に国から与えられる称号だ。その国によって称号を与えられる基準は異なるらしいが、少なくとも数少ない魔法の有識者ということになる。
国にもよるが、上流貴族並みの権限が与えられていると聞いたことがあるな。いくら引退した身であるとはいえ、大きな無礼を働けば、処刑されてもおかしくないだろう。
新しい国を訪れる時はその国の通貨や法律などは調べるようにしているが、そういった偉い人の名前までは調べていないもんなあ……。昨日出会った冒険者パーティはもしかしたら名前だけは知っていたかもしれないが、カメラや写真なんてない異世界だから顔や姿までは見たことがなかったのかもしれない。
……たとえ名前を知っていたとしても、たったひとりでこんな場所にいるとは思わないだろう。あるいは俺のようなおっさんと二人で飲んでいるとは夢にも思わなかったはずだ。
まったく……知り合いの魔法使いやカトレアといい、どうして俺が旅をしているとそういった大物な人物と出会うのだろうな? さすがに女神はあの様子だし、俺の運命をいじっているというわけではなさそうだが。
「驚かせてしまってすまんのう。今は魔法の研究をして各地を渡り歩いておるジジイじゃて、今まで通りに接してくれると嬉しいぞ」
「……ああ、わかったよ」
もしかすると社交辞令なのかもしれないが、俺は遠慮なく今までと同じように接するつもりである。昨日からの様子を見ると、タルムさんのような人はそういった特別扱いされるのが好きではないと予想している。まあ、その辺りは様子を見るとしよう。
「ほお~こいつはすごい! これまでに見てきた建物よりも綺麗に残っているんだな!」
「うむ。この王宮にはこの都市の王が住んでいたとだけあって、丈夫な造りをしておったようじゃな。他の場所よりも破損が少ないようじゃ」
タルムさんのおかげで本来ならば立ち入り禁止区域だった俺も王宮跡地に入ることができた。ボディチェックなんかもされなかったし、タルムさんはこの場で結構な権限を持っているらしい。
王宮跡地にはこれまでに見てきた遺跡よりも丈夫で豪華な壁の造りとなっており、警備がここを守っているおかげか老朽化以外の破損はあまりしていなかった。
ここは広間になっており、学校の体育館ほどの大きさがあった。警備をしたり、研究をしたりしていることもあってか、コケやツタなどがない。それだけでもこれまで見てきた景色とだいぶ異なる。綺麗な壁や柱があるだけで、こうも印象が変わるとはな。これならこのまま少し整備すればそのまま使えそうである。
当時はこの場所で着飾った王族などが日夜パーティでも開いていたのかと思うと、なんだか感慨深いものがあるぞ。
「この辺りは食堂じゃな」
「立派な石造りのテーブルだ」
広場を抜け、小さな個室なんかを通って食堂へと移動する。小さい個室といっても一部屋が数人泊まれるくらいの広さだが、広間やこの廊下などがすべて広いので、小さく見えてしまう。
食堂も広く、この中心にある巨大で真っ白なテーブルは長い年月が経っているというのに、ほとんど破損することなく残っている。このテーブルに使われていた素材はかなり硬いのだろう。
何年も昔の人がこの場所で食事をとっていた。当時はどんな料理を食べていたのか気になるところだ。
「そしてここがこの魔法都市の歴史や魔法をまとめている資料室のようなものじゃ」
「うむ、いつも警備をご苦労様じゃのう。すまぬがまたお邪魔させてもらうぞ」
「はは!」
「………………」
タルムさんが王宮跡地へ入ろうとすると警備の者たちが前に出てきた。
しかし警備の者たちがタルムさんの確認すると、すぐに頭を下げてタルムさんを王宮跡地の中へと案内し始めた。
……タルムさんが偉い人だとは予想していたが、まさか王宮跡地にも入ることができる権限を持っていることまではわからなかった。
「いったいタルムさんは何者なんだ?」
あまり聞きたくはなかったが、こうなってしまえば聞いておかなければならない。この国の王族とか言われたら、さすがに今後の付き合いをいろいろと考えることもある。
「昨日も言ったが、すでに引退したただのジジイじゃよ。ちょっと他の者よりも魔法に詳しいくらいじゃから、ガクト殿が気にする必要などはないぞ」
「なにを仰いますか! 賢者であるタルム様の名を知らぬ者などこの国にはおりませんでしょう!」
「これこれ。すでに引退した身じゃし、余計なことをガクト殿に言う必要はないのじゃぞ」
「し、失礼しました!!」
「………………」
屈強な警備の騎士の男が深く頭を下げる。
賢者ときたかあ……。
この異世界での賢者の称号は特別な意味を持つ。ここでは魔法を使える者を魔法使いと呼ぶのだが、魔法を極めた者に国から与えられる称号だ。その国によって称号を与えられる基準は異なるらしいが、少なくとも数少ない魔法の有識者ということになる。
国にもよるが、上流貴族並みの権限が与えられていると聞いたことがあるな。いくら引退した身であるとはいえ、大きな無礼を働けば、処刑されてもおかしくないだろう。
新しい国を訪れる時はその国の通貨や法律などは調べるようにしているが、そういった偉い人の名前までは調べていないもんなあ……。昨日出会った冒険者パーティはもしかしたら名前だけは知っていたかもしれないが、カメラや写真なんてない異世界だから顔や姿までは見たことがなかったのかもしれない。
……たとえ名前を知っていたとしても、たったひとりでこんな場所にいるとは思わないだろう。あるいは俺のようなおっさんと二人で飲んでいるとは夢にも思わなかったはずだ。
まったく……知り合いの魔法使いやカトレアといい、どうして俺が旅をしているとそういった大物な人物と出会うのだろうな? さすがに女神はあの様子だし、俺の運命をいじっているというわけではなさそうだが。
「驚かせてしまってすまんのう。今は魔法の研究をして各地を渡り歩いておるジジイじゃて、今まで通りに接してくれると嬉しいぞ」
「……ああ、わかったよ」
もしかすると社交辞令なのかもしれないが、俺は遠慮なく今までと同じように接するつもりである。昨日からの様子を見ると、タルムさんのような人はそういった特別扱いされるのが好きではないと予想している。まあ、その辺りは様子を見るとしよう。
「ほお~こいつはすごい! これまでに見てきた建物よりも綺麗に残っているんだな!」
「うむ。この王宮にはこの都市の王が住んでいたとだけあって、丈夫な造りをしておったようじゃな。他の場所よりも破損が少ないようじゃ」
タルムさんのおかげで本来ならば立ち入り禁止区域だった俺も王宮跡地に入ることができた。ボディチェックなんかもされなかったし、タルムさんはこの場で結構な権限を持っているらしい。
王宮跡地にはこれまでに見てきた遺跡よりも丈夫で豪華な壁の造りとなっており、警備がここを守っているおかげか老朽化以外の破損はあまりしていなかった。
ここは広間になっており、学校の体育館ほどの大きさがあった。警備をしたり、研究をしたりしていることもあってか、コケやツタなどがない。それだけでもこれまで見てきた景色とだいぶ異なる。綺麗な壁や柱があるだけで、こうも印象が変わるとはな。これならこのまま少し整備すればそのまま使えそうである。
当時はこの場所で着飾った王族などが日夜パーティでも開いていたのかと思うと、なんだか感慨深いものがあるぞ。
「この辺りは食堂じゃな」
「立派な石造りのテーブルだ」
広場を抜け、小さな個室なんかを通って食堂へと移動する。小さい個室といっても一部屋が数人泊まれるくらいの広さだが、広間やこの廊下などがすべて広いので、小さく見えてしまう。
食堂も広く、この中心にある巨大で真っ白なテーブルは長い年月が経っているというのに、ほとんど破損することなく残っている。このテーブルに使われていた素材はかなり硬いのだろう。
何年も昔の人がこの場所で食事をとっていた。当時はどんな料理を食べていたのか気になるところだ。
「そしてここがこの魔法都市の歴史や魔法をまとめている資料室のようなものじゃ」

