謁見の時間となった。
僕は、執務室に姿を現したヘルナンデス様とルーカス様と共に謁見の間の扉前に移動した。
クリスの妊娠についても、移動中に祝ってくれた。
「しかし、不思議な感覚だ。初めてケン君と会った時は、とても小さく痩せ細っていた。それが、大きくなって父親になるんだからな」
「私も、軍の施設で初めてケン君と会った時を思い出しました。私の前にしょんぼりとして座っていたあの子が、結婚して父親になるとは」
謁見の間の前で出番を待っていても、ヘルナンデス様とルーカス様はニコニコしながら話していた。
僕も二人が本心からお祝いしてくれていると分かったから、とても嬉しかった。
さて、ここからは謁見参加モードだ。
「いつもの事だが、謁見は私が兄上と話す。アスター伯爵夫人は懐妊のために不在とも話す」
一番立場が上の人が陛下に説明するという、いつもの流れだ。
クリスの事も説明してもらい、本当に感謝しかない。
「ヘルナンデス様、いつもすみません」
「なに、このくらいは構わないさ。兄上もクリスちゃんの件は話すらしいから、ケン君にもそのあたりは言及されるだろう」
偉い人達がクリスの妊娠に言及すれば、余計な事を言う人はいないだろう。
仮に変な事を言ったら、陛下以上に王家の女性陣が激怒しそうだ。
「間もなく、入場となります」
係の人が合図を送ってくれ、僕達は気を引き締めた。
そして、ゆっくりと謁見の間の扉が開き、僕達はゆっくりと謁見の間の中を進んだ。
既に王家の方々も所定の位置についており、陛下も玉座についていた。
貴族も集合しており、僕達が歩く様子を眺めていた。
中には敵意を向けるものもいるが、流石にこの時点では何も言及はなかった。
僕達は、絨毯の切れ目に着くと膝をついて頭を下げた。
「帝国への使節団よ、面をあげよ」
陛下の厳かな声で、僕達は膝をついたまま顔を上げた。
ヘルナンデス様は、ひと呼吸置いてから報告をはじめた。
「畏れながら、国王陛下に報告申し上げます。帝国への使節団、全日程を終えて無事に帰国いたしました。また、本日はアスター伯爵夫人が妊娠による体調不良のため不在となり申し訳ありません」
「ニース公爵、並びに使節団よ。此度の帝国訪問、大義であった。帝国からも、とても良い時間を過ごせたと喜びの声があった。また、アスター伯爵夫人の懐妊はめでたい事だ。教会からも、アスター伯爵夫人は当面は安静が必要だと報告を受けている。気にすることはない」
「はっ」
予定通り、ヘルナンデス様が陛下に帝国使節団の帰国報告をした。
陛下もクリスの事に言及してくれ、僕もかなりホッとした。
よく見ると、王太后様達もニコニコとしている。
一方、歯ぎしりをしながら悔しがる貴族の気配も感じられた。
きっと、僕に側室を送り込めなくなってかなり悔しいのだろう。
すると、ここで予想しなかった事が発表された。
「帰国した使節団に無理に面会をしようとした馬鹿者への裁定は、また別途通知する。そして、アスター伯爵夫人クリスを宮廷魔導師候補とする。これは、シェイク子爵領の災害復興並びに学園の教師としての実績を受けてのものだ。ただし、本人の体調が回復次第改めて適性確認を行う」
おお、クリスも宮廷魔導師候補生になるとは。
でも毎日一生懸命訓練をしているし、今までの実績も大きい。
と、ここで僕に側室を送りこもうとした貴族が動いた。
「畏れながら、陛下に進言いたします。アスター伯爵夫人が実績を上げているのは否定しませんが、些か過分な褒美かと。しかも、悪阻で謁見を欠席するような軟弱者に与える称号では……」
「黙りなさい!」
「うっ!?」
あーあ、言いたい放題したので陛下ではなく王妃様がガチギレしてしまった。
勿論王家の女性陣は全員激怒状態だし、陛下もかなり怒っていた。
文句を言った貴族はヤバいという表情に変わったが、王妃様の怒りは収まらなかった。
「なら、貴方は妻に妊娠出産がどれだけ大変かを聞いてみなさい。更に、アスター伯爵夫人は治療を受けなければならない程体調を崩しているのです。だからこそ、教会のシスターにも診察を受けて安静が必要だと言われているのです。決して、アスター伯爵夫人の体が弱いなどではありません!」
「も、申し訳ありません……」
王妃様の激怒に、文句を言った貴族は平服せんと言わんばかりだ。
王妃様に喧嘩を売ってしまったと、周りの貴族も土下座状態の貴族を哀れな目で見ていた。
「アスター伯爵夫人の体調の件について、余からは何も言わん。あと、アスター伯爵夫妻は直轄領に現れたゴブリンキングを魔法剣で討伐している。貴様は、アスター伯爵夫人と同じ事ができるか?」
「いえ、その……」
陛下も、文句を言った貴族に余計な事を言うなと釘を差した。
当の土下座状態の貴族は、真っ青な表情で汗ダクダクだ。
自業自得なので、土下座状態の貴族を助ける貴族は現れなかった。
「帝国と王国の今後の関係性について、現在大いに議論している。とはいえ、方向性は変わらぬ。諸君らも、自己研鑽に励んで国のために働くように」
「「「「「はっ」」」」」
こうして、帝国からの帰国報告の謁見は終了した。
なお、土下座状態の貴族は真っ青な表情のまま暫くその場から動けなかった。
同時に、クリスの件で文句を言うと王家の女性陣を敵に回すとハッキリと示されたのだった。
僕は、執務室に姿を現したヘルナンデス様とルーカス様と共に謁見の間の扉前に移動した。
クリスの妊娠についても、移動中に祝ってくれた。
「しかし、不思議な感覚だ。初めてケン君と会った時は、とても小さく痩せ細っていた。それが、大きくなって父親になるんだからな」
「私も、軍の施設で初めてケン君と会った時を思い出しました。私の前にしょんぼりとして座っていたあの子が、結婚して父親になるとは」
謁見の間の前で出番を待っていても、ヘルナンデス様とルーカス様はニコニコしながら話していた。
僕も二人が本心からお祝いしてくれていると分かったから、とても嬉しかった。
さて、ここからは謁見参加モードだ。
「いつもの事だが、謁見は私が兄上と話す。アスター伯爵夫人は懐妊のために不在とも話す」
一番立場が上の人が陛下に説明するという、いつもの流れだ。
クリスの事も説明してもらい、本当に感謝しかない。
「ヘルナンデス様、いつもすみません」
「なに、このくらいは構わないさ。兄上もクリスちゃんの件は話すらしいから、ケン君にもそのあたりは言及されるだろう」
偉い人達がクリスの妊娠に言及すれば、余計な事を言う人はいないだろう。
仮に変な事を言ったら、陛下以上に王家の女性陣が激怒しそうだ。
「間もなく、入場となります」
係の人が合図を送ってくれ、僕達は気を引き締めた。
そして、ゆっくりと謁見の間の扉が開き、僕達はゆっくりと謁見の間の中を進んだ。
既に王家の方々も所定の位置についており、陛下も玉座についていた。
貴族も集合しており、僕達が歩く様子を眺めていた。
中には敵意を向けるものもいるが、流石にこの時点では何も言及はなかった。
僕達は、絨毯の切れ目に着くと膝をついて頭を下げた。
「帝国への使節団よ、面をあげよ」
陛下の厳かな声で、僕達は膝をついたまま顔を上げた。
ヘルナンデス様は、ひと呼吸置いてから報告をはじめた。
「畏れながら、国王陛下に報告申し上げます。帝国への使節団、全日程を終えて無事に帰国いたしました。また、本日はアスター伯爵夫人が妊娠による体調不良のため不在となり申し訳ありません」
「ニース公爵、並びに使節団よ。此度の帝国訪問、大義であった。帝国からも、とても良い時間を過ごせたと喜びの声があった。また、アスター伯爵夫人の懐妊はめでたい事だ。教会からも、アスター伯爵夫人は当面は安静が必要だと報告を受けている。気にすることはない」
「はっ」
予定通り、ヘルナンデス様が陛下に帝国使節団の帰国報告をした。
陛下もクリスの事に言及してくれ、僕もかなりホッとした。
よく見ると、王太后様達もニコニコとしている。
一方、歯ぎしりをしながら悔しがる貴族の気配も感じられた。
きっと、僕に側室を送り込めなくなってかなり悔しいのだろう。
すると、ここで予想しなかった事が発表された。
「帰国した使節団に無理に面会をしようとした馬鹿者への裁定は、また別途通知する。そして、アスター伯爵夫人クリスを宮廷魔導師候補とする。これは、シェイク子爵領の災害復興並びに学園の教師としての実績を受けてのものだ。ただし、本人の体調が回復次第改めて適性確認を行う」
おお、クリスも宮廷魔導師候補生になるとは。
でも毎日一生懸命訓練をしているし、今までの実績も大きい。
と、ここで僕に側室を送りこもうとした貴族が動いた。
「畏れながら、陛下に進言いたします。アスター伯爵夫人が実績を上げているのは否定しませんが、些か過分な褒美かと。しかも、悪阻で謁見を欠席するような軟弱者に与える称号では……」
「黙りなさい!」
「うっ!?」
あーあ、言いたい放題したので陛下ではなく王妃様がガチギレしてしまった。
勿論王家の女性陣は全員激怒状態だし、陛下もかなり怒っていた。
文句を言った貴族はヤバいという表情に変わったが、王妃様の怒りは収まらなかった。
「なら、貴方は妻に妊娠出産がどれだけ大変かを聞いてみなさい。更に、アスター伯爵夫人は治療を受けなければならない程体調を崩しているのです。だからこそ、教会のシスターにも診察を受けて安静が必要だと言われているのです。決して、アスター伯爵夫人の体が弱いなどではありません!」
「も、申し訳ありません……」
王妃様の激怒に、文句を言った貴族は平服せんと言わんばかりだ。
王妃様に喧嘩を売ってしまったと、周りの貴族も土下座状態の貴族を哀れな目で見ていた。
「アスター伯爵夫人の体調の件について、余からは何も言わん。あと、アスター伯爵夫妻は直轄領に現れたゴブリンキングを魔法剣で討伐している。貴様は、アスター伯爵夫人と同じ事ができるか?」
「いえ、その……」
陛下も、文句を言った貴族に余計な事を言うなと釘を差した。
当の土下座状態の貴族は、真っ青な表情で汗ダクダクだ。
自業自得なので、土下座状態の貴族を助ける貴族は現れなかった。
「帝国と王国の今後の関係性について、現在大いに議論している。とはいえ、方向性は変わらぬ。諸君らも、自己研鑽に励んで国のために働くように」
「「「「「はっ」」」」」
こうして、帝国からの帰国報告の謁見は終了した。
なお、土下座状態の貴族は真っ青な表情のまま暫くその場から動けなかった。
同時に、クリスの件で文句を言うと王家の女性陣を敵に回すとハッキリと示されたのだった。


