最後にレオンは慎重にあらゆる侵入経路を確認する。何しろ襲撃が計画されているのだ。窓の強度、扉の鍵、扉の熱さ――すべてを念入りにチェックしていった。
(ここなら、守れる)
レオンは静かに頷いた。
完璧ではないが、宿屋よりは遥かに安全だ。厚い扉は簡単には破れないし、塀を乗り越えようとすれば、庭の砂利が音を立てて侵入者の存在を知らせてくれる。
何より、ここなら大切な仲間たちと一緒に暮らせる。
それが、レオンにとっては一番重要なことだった。
◇
「じゃあみんな、ここでいいかな?」
レオンは少女たちを見回した。
「うん!」
「最高!」
「決まり決まり!」
「よろしくてよ?」
みんな嬉しそうに答えた。その笑顔が、まぶしいくらいに輝いている。
レオンは幸せをかみしめながらうなずく。
ここが、アルカナの新しい拠点になる。
仲間たちと暮らす、自分たちだけの城。
「では、こちらに決めます!」
「おぉ、ありがとうございます! ではこちらにサインを……」
おじさんは契約の魔道具を使って契約を表示させ、レオンはサインした。
魔法の光が契約書を包み込み、レオンの署名が刻まれていく。
「……。これでいい?」
「はい! ご契約ありがとうございます。今この瞬間からご自由にご利用ください。鍵はこちらです」
おじさんはニコニコしながら、重厚な鍵の束をレオンに渡した。
その鍵を受け取った瞬間、レオンの胸に温かいものが込み上げてきた。
これは、ただの鍵ではない。
仲間たちとの新しい生活の、始まりの象徴だ。
「やったぁ!」
「アルカナのお城だね! ふふっ!」
「夢みたい……」
「飾り付けもやりましょ?」
女の子たちはキラキラとした笑顔で、石造りの壮麗なお屋敷を見上げた。
午後の陽光を受けて、白い壁が黄金色に輝いている。まるで、彼女たちの未来を祝福しているかのようだった。
レオンは、鍵を握りしめながら、静かに誓った。
(この仲間たちを、必ず守る)
どんな敵が来ようとも。
どんな困難が待ち受けていようとも。
仲間たちだけは、絶対に守り抜く。
それが、リーダーとしての自分の務めだ。
「さあ、入ろう。俺たちの城に」
レオンが扉を開けると、午後の陽光が差し込み、エントランスを黄金色に染めた。
少女たちの笑い声が、新しい家に響き渡る。
アルカナの新しい生活が、今、始まった。
◇
一方、カインたちは――――。
「奴ら、拠点を手に入れただと?!」
カインは情報屋からの報告書をバン!とテーブルに叩きつけると、神経質に親指の爪を噛んだ。
安酒場の薄暗い個室。壁には染みが浮かび、天井は煤で黒ずんでいる。酒と汗の臭いが充満する中、蝋燭の炎がゆらゆらと揺れ、カインの顔に不気味な陰影を落としていた。
その碧眼には、狂気じみた憎悪が燃えている。
報告書には、『アルカナ』が高級住宅街に豪邸を購入したこと、街の人々が彼らを英雄として讃えていること、そして――自分たち『太陽の剣』が「逃げ出した臆病者」と笑い者にされていることが、細かく記されていた。
一行一行が、カインの心を抉っていく。
「英雄気取り……目障りよね……」
セリナもキュッと唇をかんだ。その栗色の髪が、苛立ちで揺れる。
かつて自分が捨てた男が、今では街中の注目を集めている。あの無能だったレオンが、今では伝説の英雄として語られている。
酒場でも、市場でも、道端でも、人々は『アルカナ』の話をしている。
そして、その話題の中で、自分たちの名前が出てくることは、もはやなかった。
その事実が、セリナのプライドをズタズタに引き裂いていた。
(私の選択は、間違っていなかったはず……)
そう自分に言い聞かせても、現実は残酷だった。カインを選んだ自分は、今や「逃げ出した男の女」として蔑まれている。
「レオンのくせに生意気だ。ぐちゃぐちゃに踏みつぶしてやらんと気が収まらん!」
カインの声は、憎悪に震えていた。
爪を噛む指先から、血が滲んでいる。だが、彼はその痛みにすら気づいていなかった。
「狂月の鴉に……頼みますか?」
『太陽の剣』のメンバーで盾役の大男、ガンツがカインを見た。その小さな目には、邪悪な期待が宿っている。
狂月の鴉――。
それは、裏社会で恐れられる暗殺者集団だった。金さえ払えば、どんな汚れ仕事でも引き受ける。誘拐、暗殺、略奪――彼らにとって、人の命など虫けら同然。
表の世界では決して口にされない名前。だが、闇の住人たちの間では、その名は死の代名詞として囁かれていた。
「なるほど……小娘たちをぐちゃぐちゃに犯して再起不能にしてやれば、レオンも目を覚ますだろう。くっくっく」
カインの口元が、歪んだ笑みを浮かべる。
もはや、そこには冒険者としての誇りなど、微塵も残っていなかった。あるのは、嫉妬に狂った男の醜い欲望だけ。
(ここなら、守れる)
レオンは静かに頷いた。
完璧ではないが、宿屋よりは遥かに安全だ。厚い扉は簡単には破れないし、塀を乗り越えようとすれば、庭の砂利が音を立てて侵入者の存在を知らせてくれる。
何より、ここなら大切な仲間たちと一緒に暮らせる。
それが、レオンにとっては一番重要なことだった。
◇
「じゃあみんな、ここでいいかな?」
レオンは少女たちを見回した。
「うん!」
「最高!」
「決まり決まり!」
「よろしくてよ?」
みんな嬉しそうに答えた。その笑顔が、まぶしいくらいに輝いている。
レオンは幸せをかみしめながらうなずく。
ここが、アルカナの新しい拠点になる。
仲間たちと暮らす、自分たちだけの城。
「では、こちらに決めます!」
「おぉ、ありがとうございます! ではこちらにサインを……」
おじさんは契約の魔道具を使って契約を表示させ、レオンはサインした。
魔法の光が契約書を包み込み、レオンの署名が刻まれていく。
「……。これでいい?」
「はい! ご契約ありがとうございます。今この瞬間からご自由にご利用ください。鍵はこちらです」
おじさんはニコニコしながら、重厚な鍵の束をレオンに渡した。
その鍵を受け取った瞬間、レオンの胸に温かいものが込み上げてきた。
これは、ただの鍵ではない。
仲間たちとの新しい生活の、始まりの象徴だ。
「やったぁ!」
「アルカナのお城だね! ふふっ!」
「夢みたい……」
「飾り付けもやりましょ?」
女の子たちはキラキラとした笑顔で、石造りの壮麗なお屋敷を見上げた。
午後の陽光を受けて、白い壁が黄金色に輝いている。まるで、彼女たちの未来を祝福しているかのようだった。
レオンは、鍵を握りしめながら、静かに誓った。
(この仲間たちを、必ず守る)
どんな敵が来ようとも。
どんな困難が待ち受けていようとも。
仲間たちだけは、絶対に守り抜く。
それが、リーダーとしての自分の務めだ。
「さあ、入ろう。俺たちの城に」
レオンが扉を開けると、午後の陽光が差し込み、エントランスを黄金色に染めた。
少女たちの笑い声が、新しい家に響き渡る。
アルカナの新しい生活が、今、始まった。
◇
一方、カインたちは――――。
「奴ら、拠点を手に入れただと?!」
カインは情報屋からの報告書をバン!とテーブルに叩きつけると、神経質に親指の爪を噛んだ。
安酒場の薄暗い個室。壁には染みが浮かび、天井は煤で黒ずんでいる。酒と汗の臭いが充満する中、蝋燭の炎がゆらゆらと揺れ、カインの顔に不気味な陰影を落としていた。
その碧眼には、狂気じみた憎悪が燃えている。
報告書には、『アルカナ』が高級住宅街に豪邸を購入したこと、街の人々が彼らを英雄として讃えていること、そして――自分たち『太陽の剣』が「逃げ出した臆病者」と笑い者にされていることが、細かく記されていた。
一行一行が、カインの心を抉っていく。
「英雄気取り……目障りよね……」
セリナもキュッと唇をかんだ。その栗色の髪が、苛立ちで揺れる。
かつて自分が捨てた男が、今では街中の注目を集めている。あの無能だったレオンが、今では伝説の英雄として語られている。
酒場でも、市場でも、道端でも、人々は『アルカナ』の話をしている。
そして、その話題の中で、自分たちの名前が出てくることは、もはやなかった。
その事実が、セリナのプライドをズタズタに引き裂いていた。
(私の選択は、間違っていなかったはず……)
そう自分に言い聞かせても、現実は残酷だった。カインを選んだ自分は、今や「逃げ出した男の女」として蔑まれている。
「レオンのくせに生意気だ。ぐちゃぐちゃに踏みつぶしてやらんと気が収まらん!」
カインの声は、憎悪に震えていた。
爪を噛む指先から、血が滲んでいる。だが、彼はその痛みにすら気づいていなかった。
「狂月の鴉に……頼みますか?」
『太陽の剣』のメンバーで盾役の大男、ガンツがカインを見た。その小さな目には、邪悪な期待が宿っている。
狂月の鴉――。
それは、裏社会で恐れられる暗殺者集団だった。金さえ払えば、どんな汚れ仕事でも引き受ける。誘拐、暗殺、略奪――彼らにとって、人の命など虫けら同然。
表の世界では決して口にされない名前。だが、闇の住人たちの間では、その名は死の代名詞として囁かれていた。
「なるほど……小娘たちをぐちゃぐちゃに犯して再起不能にしてやれば、レオンも目を覚ますだろう。くっくっく」
カインの口元が、歪んだ笑みを浮かべる。
もはや、そこには冒険者としての誇りなど、微塵も残っていなかった。あるのは、嫉妬に狂った男の醜い欲望だけ。



