レオンは、そんな少女たちの姿を見つめながら、静かに涙を流した。
たった数日前、全てを失った。
仲間に裏切られ、恋人に捨てられ、家族に見放され、奴隷寸前にまで追い込まれたあの日――ギルドの冷たい床に転がって、自分の人生は終わったと思った。
だが今、新しい仲間と共に、英雄として凱旋している。
運命は、確かに変えられたのだ。
もちろんそれは【運命鑑定】のおかげではある。だが、それだけではない。
この少女たちが自分の限界を超え、未来をつかみ取ってくれたから。
一人では、何も成し遂げられなかった。でも、五人なら。このアルカナなら、運命すら覆すことができる。
レオンは涙を拭い、窓の外の群衆に手を振った。
今、素敵な仲間とともに大勢の人に祝福され、明るい未来への確かな手ごたえを感じていた。
◇
馬車が冒険者ギルドの前に到着すると、そこには更なる群衆が待ち構えていた。
ギルドの前の広場は、人で埋め尽くされている。身動きが取れないほどの人々が、馬車の到着を今か今かと待っていたのだ。
ギルドマスターが、涙を流しながらアルカナを迎える。あの厳格な顔が、今は感動で歪んでいた。
「よくぞ……よくぞ帰ってきてくれた!」
その声は震えていた。十万の命を守ってくれた若者たちへの、心からの感謝が滲んでいる。
その横には、かつて『アルカナ』を嘲笑っていた冒険者たちが、頭を下げて立っていた。
「すまなかった!」
「俺たちが間違っていた!」
「あんたらこそ、本物の英雄だ!」
彼らの顔には、羞恥と後悔、そして純粋な尊敬が浮かんでいた。落ちこぼれだと馬鹿にしていた者たちが、自分たちには到底できないことをやってのけた。その事実を、彼らは素直に認めていた。
五人は馬車から降り立つ。
うぉぉぉぉ!
その瞬間、歓声が上がり、街中から割れんばかりの拍手が沸き起こった。
地鳴りのような歓声。雷鳴のような拍手。空気そのものが震えているかのような、圧倒的な熱狂。
レオンたちはその迫力に一瞬気おされ、お互い顔を見合わせる。
たった数日前、この同じ場所で馬鹿にされていたのだ。「落ちこぼれパーティ」と嘲笑われ、「自殺行為だ」と罵られていた。
それが今、英雄として讃えられている。
その変化があまりにも劇的で、現実感が湧かない。
しかし、クスッと笑いあうと、みんなにっこりと笑いながら群衆に向かって大きく手を振った。
うぉぉぉぉぉ! わぁぁぁぁ!
花吹雪が舞い、魔法の光が空を彩り、ひときわ大きな歓声が天まで届く。
レオンは、隣に立つ四人の少女たちを見つめた。
シエルが涙を流しながら手を振っている。ミーシャが聖女の微笑みではない、本物の笑顔を浮かべている。ルナが照れくさそうに頬を染めながら、それでも嬉しそうに群衆に応えている。エリナが、クールな表情の奥で、確かに微笑んでいる。
この少女たちと出会えて、本当に良かった。
心の底から、そう思った。
だが、これは終わりではない。
始まりなのだ。
これから先、どんな運命が待ち受けているのかは分からない。新たな敵が現れるかもしれない。より困難な試練が待っているかもしれない。
それでも、この仲間となら乗り越えられる。
レオンはそう確信しながら、青く澄み渡った空を見上げた。
花びらが舞い、歓声が響き、そして未来への希望が、胸の奥で静かに燃えていた。
◇
だが、この凱旋を忌々しそうに睨む者たちがいた。
レオンを追放した『太陽の剣』のリーダー、カインとセリナである。
二人は少し離れたカフェの二階のテラスから、花吹雪の舞う凱旋パレードを見つめていた。歓声と拍手に包まれた通りは、まるで祭りのような熱狂に満ちている。
だが、カインの目には、その光景が地獄絵図のように映っていた。
「ケッ! たまたま火山が噴火しただけで英雄気取りかよ!」
吐き捨てるように言う。だが、その声は震えていた。
「ラッキーだけの新人の小娘たち……。あームカつく!」
セリナも眉を吊り上げて毒づく。栗色の髪が、苛立ちで揺れた。
カインたちはスタンピードの報を受けた時、なんと、我先にクーベルノーツを逃げ出していた。
Aランクパーティのリーダーとして、街を守るべき立場にありながら、真っ先に逃げ出したのだ。三万の魔物が迫っていると聞いた瞬間、カインの頭に浮かんだのは「沈没船からは逃げねば」という計算だけだった。
英雄として散るなんて馬鹿のやること。命あっての物種だと、カインたちは街を後にした。
だが昨日、いきなり魔物全滅の報を受けて、慌てて戻ってきたのだ。
まさか、と思った。
三万の魔物が、たった一夜で全滅するなど、あり得るはずがない。何かの間違いだ。誤報だ。そう信じたかった。
しかし――それがレオンたちのパーティの成果だと聞いた瞬間、カインとセリナに戦慄が走った。
「あの無能にこんなことできるわけがない」
カインは唸るように言った。
たった数日前、全てを失った。
仲間に裏切られ、恋人に捨てられ、家族に見放され、奴隷寸前にまで追い込まれたあの日――ギルドの冷たい床に転がって、自分の人生は終わったと思った。
だが今、新しい仲間と共に、英雄として凱旋している。
運命は、確かに変えられたのだ。
もちろんそれは【運命鑑定】のおかげではある。だが、それだけではない。
この少女たちが自分の限界を超え、未来をつかみ取ってくれたから。
一人では、何も成し遂げられなかった。でも、五人なら。このアルカナなら、運命すら覆すことができる。
レオンは涙を拭い、窓の外の群衆に手を振った。
今、素敵な仲間とともに大勢の人に祝福され、明るい未来への確かな手ごたえを感じていた。
◇
馬車が冒険者ギルドの前に到着すると、そこには更なる群衆が待ち構えていた。
ギルドの前の広場は、人で埋め尽くされている。身動きが取れないほどの人々が、馬車の到着を今か今かと待っていたのだ。
ギルドマスターが、涙を流しながらアルカナを迎える。あの厳格な顔が、今は感動で歪んでいた。
「よくぞ……よくぞ帰ってきてくれた!」
その声は震えていた。十万の命を守ってくれた若者たちへの、心からの感謝が滲んでいる。
その横には、かつて『アルカナ』を嘲笑っていた冒険者たちが、頭を下げて立っていた。
「すまなかった!」
「俺たちが間違っていた!」
「あんたらこそ、本物の英雄だ!」
彼らの顔には、羞恥と後悔、そして純粋な尊敬が浮かんでいた。落ちこぼれだと馬鹿にしていた者たちが、自分たちには到底できないことをやってのけた。その事実を、彼らは素直に認めていた。
五人は馬車から降り立つ。
うぉぉぉぉ!
その瞬間、歓声が上がり、街中から割れんばかりの拍手が沸き起こった。
地鳴りのような歓声。雷鳴のような拍手。空気そのものが震えているかのような、圧倒的な熱狂。
レオンたちはその迫力に一瞬気おされ、お互い顔を見合わせる。
たった数日前、この同じ場所で馬鹿にされていたのだ。「落ちこぼれパーティ」と嘲笑われ、「自殺行為だ」と罵られていた。
それが今、英雄として讃えられている。
その変化があまりにも劇的で、現実感が湧かない。
しかし、クスッと笑いあうと、みんなにっこりと笑いながら群衆に向かって大きく手を振った。
うぉぉぉぉぉ! わぁぁぁぁ!
花吹雪が舞い、魔法の光が空を彩り、ひときわ大きな歓声が天まで届く。
レオンは、隣に立つ四人の少女たちを見つめた。
シエルが涙を流しながら手を振っている。ミーシャが聖女の微笑みではない、本物の笑顔を浮かべている。ルナが照れくさそうに頬を染めながら、それでも嬉しそうに群衆に応えている。エリナが、クールな表情の奥で、確かに微笑んでいる。
この少女たちと出会えて、本当に良かった。
心の底から、そう思った。
だが、これは終わりではない。
始まりなのだ。
これから先、どんな運命が待ち受けているのかは分からない。新たな敵が現れるかもしれない。より困難な試練が待っているかもしれない。
それでも、この仲間となら乗り越えられる。
レオンはそう確信しながら、青く澄み渡った空を見上げた。
花びらが舞い、歓声が響き、そして未来への希望が、胸の奥で静かに燃えていた。
◇
だが、この凱旋を忌々しそうに睨む者たちがいた。
レオンを追放した『太陽の剣』のリーダー、カインとセリナである。
二人は少し離れたカフェの二階のテラスから、花吹雪の舞う凱旋パレードを見つめていた。歓声と拍手に包まれた通りは、まるで祭りのような熱狂に満ちている。
だが、カインの目には、その光景が地獄絵図のように映っていた。
「ケッ! たまたま火山が噴火しただけで英雄気取りかよ!」
吐き捨てるように言う。だが、その声は震えていた。
「ラッキーだけの新人の小娘たち……。あームカつく!」
セリナも眉を吊り上げて毒づく。栗色の髪が、苛立ちで揺れた。
カインたちはスタンピードの報を受けた時、なんと、我先にクーベルノーツを逃げ出していた。
Aランクパーティのリーダーとして、街を守るべき立場にありながら、真っ先に逃げ出したのだ。三万の魔物が迫っていると聞いた瞬間、カインの頭に浮かんだのは「沈没船からは逃げねば」という計算だけだった。
英雄として散るなんて馬鹿のやること。命あっての物種だと、カインたちは街を後にした。
だが昨日、いきなり魔物全滅の報を受けて、慌てて戻ってきたのだ。
まさか、と思った。
三万の魔物が、たった一夜で全滅するなど、あり得るはずがない。何かの間違いだ。誤報だ。そう信じたかった。
しかし――それがレオンたちのパーティの成果だと聞いた瞬間、カインとセリナに戦慄が走った。
「あの無能にこんなことできるわけがない」
カインは唸るように言った。



