「では、改めて謁見を行う」

 そして、陛下は場を仕切り直しました。
 まだまだ、説明することがあるみたいですね。

「アーサー、エドガーにも嫁を勧めるものがいるが、今はその話は一切受け付けない。二人とも、まだ小さい子どもだ。健やかな成長を祈るのが正しい役目だろう」

 またまた陛下からの注意が入りました。
 きっと、嫁にと勧めるしつこい貴族がいるんだろうね。
 普通に、アーサーちゃんとエドガーちゃんのお友達から始めれば良い気がします。
 僕の隣りにいるヘンリーさんも、思わず溜息をついちゃいました。

「また、軍の改革を進めることにする。実力主義もそうだが、キチンと統制が取れるように指揮系統を整理する。この試みが上手くいき次第、各部署にも適用する。何よりも、日頃からの自己研鑽を積むのが基本だ」

 続いて話があったのは、構造改革に関することでした。
 たいして何もしないのに高い給料をもらうことを無くす為に、色々な手を打つそうです。
 この場にいる殆どの人にはあまり関係ない話だけど、さっき捕まった貴族みたいな考えを持っている当主にとっては大変なことですね。
 でも、陛下のやることは進めたほうがいいと思います。
 僕も、お金の魔力に取り憑かれたあの三人の冒険者に酷い目に遭いましたから。
 その後も、これからの改革の予定を話して謁見は終わりました。
 何人か悔しそうな表情の貴族がいるけど、念の為に鑑定魔法で調べておきました。

「ナオが調べた連中なら気にしなくていい。一週間以内に、強制捜査が入る」

 謁見の間から応接室に移動すると、陛下が大量のお菓子を食べながらにべもなく断言していました。
 もしかしたら、スラちゃんとドラちゃんが夜な夜な偵察していた対象に含まれるかもしれないですね。

「それにしても、僕とエミリーさんの婚約を巡ってものすごいクレームが入っていたんですね」
「『成り上がり貴族に王家を嫁がせてはならぬ』って感じだったのよ。自分たちは贅沢貴族だというのにね。要は、見栄を張る為に、エミリーを嫁にして王家の血が入るようにと思ったのよ」

 王妃様も、お菓子をもりもりと食べながら答えてくれました。
 自分たちの行動が、まさに王家の人が一番嫌っているって分かっていなかったみたいですね。
 何にせよ、これで謁見は終了なので僕たちは大教会に向かって奉仕活動に合流します。
 シャーロットさんやアーサーちゃんたちも一緒に向かうのだけど、ここでちょっとビックリする事が報告されました。

「失礼いたします。大教会にて、犯罪組織の残党によるテロと思われる攻撃が発生しました。カタルシス伯爵様の弟君と妹君により、全ての攻撃は防がれ犯人は捕まっております。現在、大教会の周囲を警戒中となります」

 兵が応接室に入ってきて報告したけど、全員が問題なしと思っていました。
 もしかしたら、かなり中途半端な攻撃だったのかもしれません。
 カエラとキースなら、余程のことがない限り殆どの攻撃を防げるもんね。
 もちろん、お母さんとサマンサお姉ちゃんの攻撃は僕でも防げないけど。
 それに、クロちゃん、ギンちゃん、キキちゃんも一緒にいるから、万が一犯人が大教会の周囲に潜伏していても、直ぐに発見するでしょうね。

「それじゃあ、私たちも出発をしましょうね」
「「はーい」」

 マリアさんも、特に気にすることなく出発の準備をしようと言っていました。
 僕はこのままの格好でいいので、王家の人々の着替え待ちですね。

「ヘンリーさんは、これからお仕事ですか?」
「さっき謁見の間で捕縛した連中への聴取があるのだよ。催眠聴取の許可も出ているから、スラちゃんも一緒だね」

 あらら、ヘンリーさんとスラちゃんはとっても忙しそうですね。
 でも、代わりにナンシーさんが奉仕作業に参加するそうです。
 ということで、僕は暫くの間応接室でみんなの準備が終わるのを待っていました。