ガチャガチャ、ガチャガチャ。

「玄関ドアにも鍵がかけられています」

 兵の報告を聞いて、またかってみんな思っちゃいました。
 うーん、また悪い意味での見本ができちゃいました。
 僕は、思わず溜息をつきながらノリスさんとノーヴェさんに再び説明を始めました。

「屋敷の門が閉まっていると、高確率で屋敷の玄関も閉まっています。その場合は、屋敷の裏口もしくは他の場所が開いていないかを確認します。もっとも、玄関を無理矢理こじ開けなくても各部屋の窓から強制的に侵入することも可能です」

 僕の説明に、ノリスさんとノーヴェさんも再びメモを取ります。
 既に強制捜査を宣言しているので、屋敷に強引に入る事も可能です。
 もちろんスラちゃんやシアちゃんによる鍵開けもできるんだけど、今回は幸いにしてその必要はありませんでした。

「報告します。裏口が開いておりました。現在、裏口周辺を確保し屋敷の中に兵が突入しております」

 兵の偉い人が僕たちに状況を報告したのを皮切りに、一気に事態が動きました。
 うーん、裏口が開いているなんて初めてのケースです。
 しかも、その開いていた裏口で兵を待ち構えることもなかったそうです。
 これじゃあ、頭隠して尻隠さずですね。
 エミリーさんもスラちゃんも、かなり呆れていました。
 何にせよ、僕たちも裏口に回って屋敷の中に入ります。

「王国軍です。これより、強制捜査命令書に従い屋敷内の強制捜査を行います。屋敷の主人ならびに関係者のところに案内して下さい」
「「「はっ、はい!」」」

 既に裏口から多数の兵が入っているので、屋敷の中は少し混乱状態でした。
 更に僕が見せた強制捜査命令書によって、一気に状況が動きます。
 使用人の案内で、屋敷の執務室に向かいました。

「「アンアン!」」
「キキッ」
「「こっちだねー」」

 クロちゃん、ギンちゃん、キキちゃんと共にカエラとキースが屋敷の捜索を始めています。
 クロちゃんとギンちゃんの鼻の良さから逃れられるものはないし、兵も付き添っています。
 僕たちは、僕たちの仕事をしましょう。

「こ、こちらになります……」

 ガチャガチャ、ガチャガチャ。

 使用人に連れられて屋敷の執務室の前に到着したけど、またまたドアの鍵がかかっていました。
 ここまでくると、ノリスさん、ノーヴェさんも何となく状況が分かったみたいですね。
 では、再びスラちゃんの鍵開けでドアを開けちゃいます。

 ガチャガチャ、ガチャ!
 ギギギ……

「なっ……」

 執務室のドアが開くと、驚愕の表情をしている当主がいました。
 うーん、なんで悪いことをしている人って、みんな横に大きいんだろうか。
 とはいえ、やることは進めないといけないですね。
 すると、今度はエミリーさんが僕から強制捜査命令書を受け取って当主に突きつけました。

「王国王女、エミリーよ。違法薬物に関する強制捜査命令書に基づき、屋敷内の強制捜査を実施します。それに、度重なる開門要求を拒否するように使用人に命じていたなんていい度胸ね」
「ぐっ……」

 何度も強制捜査の邪魔をされたので、エミリーさんから怒気が漏れています。
 流石に当主もエミリーさんの怒気に気がついたのか、汗をかき始めていますね。
 すると、当主はとんでもないことを言い出したのです。

「ふ、ふん。お前らなんかに見つけるのは不可能だ」
「「あっ……」」

 ノリスさんとノーヴェさんも思わず絶句しちゃったけど、その言い方だとこの屋敷に不審物があってどこかに隠してあるって言い方ですね。
 当主は、汗をダラダラとかきながら何故か勝ち誇った表情をしていました。
 でも、僕の友達の前ではどこに隠しても全く無意味だと思いますよ。

 ダダダダ。

「悪いものを見つけたよ!」
「使用人の空き部屋にあったよ!」
「なっ!?」

 カエラとキースが執務室に駆け込んできたけど、予想以上に見つけやすいところに違法薬物を隠していたんだね。
 当主はあっさりと見つかって驚いているけど、これなら兵だけでの捜索でも見つけるのは時間の問題だったね。
 すると、今度はカエラとキースがとんでもないことを言ってきたのです。

「あのね、怪我をした使用人がいっぱいいたから治療したよ!」
「お館様に殴られたり蹴られたりしたって言っていたよ!」

 今度は、屋敷の主人による使用人虐待が発覚しました。
 もちろん、使用人への虐待は禁じられています。
 これには、僕もノリスさんもノーヴェさんもプンプンです。
 でも、この人が一番怒っちゃいました。

「ふーーーん? 誰が何をしたって?」
「あ、あわわわ……」

 エミリーさんは、こういう人を虐めることが大っきらいだもんね。
 物凄く怒って、拳をポキポキと鳴らしながら当主にゆっくりと近づいて行きました。
 当主は、思わず尻餅をつきながら後ずさりをしています。
 ようやく、怒らせてはいけない人を怒らせたと理解したみたいです。