僕たちは代官邸に到着し、今回用意された部屋に案内されました。
　先にお母さんと一緒に移動していたお父さんも、今は少し落ち着いていますね。
　合同結婚式を挙げた家族と話をしているけど、カエラとキースそれにドラちゃんたちがいい緩衝材になってとても和やかです。
　因みに、披露宴っていっても仰々しいものではなく、お互いの家族との会食みたいなものです。

「「あー、来たよー！」」
「キュー」

　僕たちが代官邸に姿を現すと、カエラたちやドラちゃんたちが声を上げました。
　僕たちの手を取って、席に案内します。
　そういえば、今回の合同結婚式で小さい子っていうとカエラとキースだけなんだね。
　だからなのか、カエラとキースの側には話しかけにくる人たちでいっぱいでした。
　とはいえ、悪い人はいないので二人とも気にしません。
　僕たちも席について、話を始めます。

「しかし、ナオ君の姿が消えてあの三家の犯行だと知った時は、もうナオ君は駄目かと思ったよ。あの三家に良いようにやられていた頃だったから、絶望的なことまで考えた。ところが、そこから奇跡のような展開を迎えることができたんだ。ナオ君を救った勇者様パーティには、本当に感謝しかない」

　少しお酒が回っている薬屋さんのおじさんが、しみじみと話をしています。
　それだけ、僕が地元からいなくなった状況は絶望的だったみたいです。
　そこから、ヘンリーさんたちに助けられてあの三人が捕まり、更に実家に行って三家と当時の代官を捕まえました。
　そこから、村の状況は一変しました。

「あの三家のものによる妨害は、もしかしたらもう少し詳しく続くかもしれない。それでも、こうして三家の脅威に震えることなく平穏に過ごせるのはとてもありがたいと思っているよ」

　薬屋さんのおじさんがお酒を飲みながらしみじみと話すのを、みんなも頷きながら聞いていました。
　あの代官と三家による悪政から逃れることができ、地元の環境も劇的に良くなりました。
　僕も地元の状況が変わることに貢献できて、とても嬉しいです。
　すると、薬屋さんのおじさんがとんでもないことを話してきたのです。

「これから村も人が増えてくるだろうし、観光客も増えるだろうな。なんといっても、『白銀の竜使い』様が生まれたところだ」
「えっ、僕目当ての観光客ですか？」
「祭りを見にくるものもいるし、最近はそういうのも増えた。これも、ナオ君が各地で活躍しているのもあるだろうな」

　あの、勇者パーティの一員でもあるエミリーさんとナンシーさんまで、他の人に混じって頷いていました。

「私たちって、王族や上位貴族とかだから貴族の義務として奉仕的に動いているのもあるのよ。そんな中に平民のナオが現れて、しかも手柄を打ち立て貴族になったのよ。サクセスストーリーとして十分すぎるわ」
「そういえば、ナオ君のことを絵本にするって話もあったわね。子どもたちにとって、憧れの勇者様になるかもよ」

　エミリーさんはともかくとして、ナンシーさんが話してくれた件はとんでもないものだと思うけど。
　しかも、絵本の件は王妃様を中心にして既に動いているそうです。
　僕は、思わずガクリとしちゃいました。
　なんだかんだいって、披露宴はとても穏やかに進みました。
　因みに、お父さんはいつの間にかお酒を飲んで寝てしまっていました。
　今日はとても大変だったから、ゆっくりと休んで欲しいですね。