年末間近の奉仕活動も終わり、これで無事に新年になるのかなと思っていました。
 そしたら、まさかの大晦日にある意味大事件勃発です。
 何か反乱が起きたとか犯罪が起きたわけではないけど、僕たちは急いで王城に向かってくれと言われました。
 すると、直ぐに王城の医務室に案内されました。
 ベッドにはマリアさんが辛そうにしながら横たわっていて、陛下があれこれ職員に指示を出していました。
 年末ということもあり、王城内の職員の数はかなり少なめでした。

「陛下、遅くなり申し訳ございません」
「おお、すまんな。大丈夫だと思うが、念の為に治療と鑑定をしてくれ」

 なんで鑑定もするのかなと思いつつ、僕はさっそくマリアさんの側に行って回復魔法を放ちました。

 シュイン、ぴかー。

「ナオ君、ありがとうね。だいぶ楽になったわ。原因は、何となく分かっているんだけどね」

 マリアさんの顔色はだいぶ良くなったけど、まだ少し辛そうです。
 でも、これだけ体調が悪くなるって一体何だろう。
 そう思いながら、僕はマリアさんに鑑定魔法を使いました。

 シュイン、もわーん。

「えーっと、特に問題がある表示はない……あれ? 妊娠中って表示が出ています!」
「ふふ、やっぱりそうだったのね」

 おお、なんとマリアさんに第三子の妊娠が発覚したのです。
 悪阻が酷かったから、体調を崩してしまったんですね。
 でも、このくらいなら宮廷医でも直ぐに分かると思うんだけどなあ。
 そういえば、その宮廷医はどこに行ったのだろうか。
 王城では宮廷医は交代勤務になっていて、年末年始も軍の治療兵が待機しているはずだよ。
 すると、陛下がまたまた驚きのことを教えてくれました。

「実はな、ヘンリーと共に年末の挨拶に来たシンシアも似たような症状が出た。先にシンシアが体調を崩したので、非番対応の治療兵はそっちに行った」

 なんと、シンシアさんにも妊娠の兆候が現れたそうです。
 念の為に僕も確認してくれと陛下に言われたので、陛下と共に王族の居住スペースに向かいました。
 医務室は兵ががっちりと警護しているけど、念の為にスラちゃんたちもマリアさんの側に残るそうです。

「陛下、こちらになります」
「うむ」

 というか、何で陛下がこうして色々と動いているのかなと思ったけど、多分王妃様に色々こき使われているのかなって思っちゃいました。
 そして、王族の居住スペースの食堂に行くと、顔色が良いシンシアさんと心配そうにしているヘンリーさん、エミリーさん、シャーロットさんの姿がありました。

「あなた、マリアは大丈夫だったの?」
「ナオが直ぐに治療して、妊娠中だと分かった。外に出ているジョージ、アーサー、エドガーも、王城に戻るように指示を出した。ブレアとナンシーも、そろそろ戻るだろう」

 やっぱりというか、王妃様が陛下をこき使ったようですね。
 年末の挨拶にみんな出ていて、ブレアさんとナンシーさんとはたまたま入れ違いになっちゃったそうです。

「初めての妊娠というのは、誰もが不安になるものよ。安定期に入るまで、シンシアは屋敷でゆっくりした方がいいわね」
「わざわざ配慮頂き、ありがとうございます」

 シャーロットさんは、ニコリと微笑みながらシンシアさんのことを労わっていました。
 ヘンリーさんも、祖母であるシャーロットさんにお礼を言っています。
 その間にササっとシンシアさんを鑑定したら、やっぱり妊娠中って表示が出ていました。
 王家に関係のある人が二人も妊娠が発覚し、来年は間違いなく盛り上がりそうな気がします。

 ドタドタドタ、バタン。

「「おかーさま!」」

 すると、元気の良い足音と共にアーサーちゃんとエドガーちゃんが食堂に入ってきました。
 きっと、急いで挨拶に行った屋敷から戻ってきたんだね。

「二人とも、ちゃんとノックして部屋の中に入るのよ」
「「はーい」」

 シャーロットさんがちょっと苦笑しながら二人のことを注意したけど、気持ちは分からなくもないもんね。
 そして、シャーロットさんが二人の手を引いて医務室に案内してあげました。
 間違いなく、二人とも医務室に行ったら盛り上がるだろうね。

「シンシアさん、体調は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。回復魔法をかけて貰ったらだいぶ良くなったわ」

 シンシアさんの顔色はよく、僕に気を使っている訳でもなさそうです。
 念の為にエミリーさんがシンシアさんに回復魔法をかけたけど、もう大丈夫そうでした。

「しかし、赤ちゃんを授かるってこんなにも大変なのね」
「ふふ、私もこうなるとは思わなかったわ。エミリーも、そのうち分かるようになるわ」

 シンシアさんとエミリーさんは、僕のことをチラチラと見ながら何かひそひそと話をしていました。
 でも、大事件が起きている訳じゃなくて本当に良かったです。
 因みに、医務室に言ったアーサーちゃんとエドガーちゃんは、「お兄ちゃんになる!」と大喜びでした。