同じ勇者でも、僕はヘンリーさんみたいにかっこよくはできません。
 でも、治療は大得意だし、たくさんの人に話しかけるのも苦ではありません。
 できるだけ多くの人から情報を集めて、偉い人に対策してもらいます。
 エミリーさんがいるから、偉い貴族とも普通に話せるしね。

「ナオおにーちゃん、こっちは終わったよー!」
「こっちも終わったよ!」

 今日は治癒師がたくさんいるので、あっという間に町の人への治療を終えました。
 僕もたくさんの人を治療して、たくさんの話を聞くことができました。
 聞いた情報は既に王城に送られていて、さっそく分析にかけられています。

「アンアン!」
「「あっ、クロちゃんだ!」」

 お昼前には、町の巡回に行っていたスラちゃんとクロちゃんが教会に戻ってきました。
 スラちゃん曰く、思った以上の犯罪者を捕まえたそうです。
 そして、普通のスライムと小さなオオカミだと思っていた同行していた守備隊員は、その能力の高さに驚いたみたいです。
 こうして今日の活動も無事に終わり、僕たちは大きくなったドラちゃんに乗って王都の王城に戻ります。

「「おかえりー!」」

 王城内の王家の食堂に移動すると、アーサーちゃんとエドガーちゃんが元気よく出迎えてくれました。
 僕たちも席に着いて食事にしようとすると、今日は陛下も同席することになりました。
 リルムさんは、他の使用人と共に配膳を手伝っています。

「中々興味深い情報を得ることができた。それに、普通なら一日がかりの仕事を半日でこなした。ナオとその仲間ならではの移動力と言えよう」

 ヘンリーさんが勇者様だった時は、基本的に泊りになるのは駄目だったそうです。
 できても一泊くらいで、そこまで遠くまで活動できなかったそうです。
 ドラちゃんだったら、王国の殆どのところに日帰りでいけるもんね。

「ナオは、別にヘンリーを目指さなくていい。ナオらしい勇者になればそれで十分だ」
「ふふ、そうね。ナオなら、とっても優しい勇者様になりそうね」

 陛下だけでなく王妃様も、僕らしい勇者になるといいと言っています。
 僕の場合は、勇者だって思わずに行動しようと思うけどね。

「ねーねーお母様、僕はいつ勇者様になれるの?」
「なれるの?」
「うーん、あと五年はかかるかな」
「「えー!」」

 マリアさんの苦笑しながらの返答に、アーサーちゃんとエドガーちゃんがブーイングをあげていました。
 僕も、流石に二人にはまだ早いと思いますよ。
 もっといっぱい勉強して、もっと大きくならないといけないもんね。

「明日はみんなで大教会で奉仕活動をするから、一生懸命に頑張らないとね」
「「頑張るー!」」

 ここはシャーロットさんが上手くしめてくれました。
 頑張る事ができたので、アーサーちゃんとエドガーちゃんもとっても良い笑顔です。
 セードルフちゃんとルルちゃんも奉仕活動に参加する予定だし、ちびっ子たちはとっても張り切りそうですね。