僕は、ヘンリーさんとスラちゃんと共にオオボス侯爵家の執務室に向かいました。
 オオボス侯爵の私物は綺麗さっぱりなくなっていて、領地経営に必要な物だけ配置されています。
 なので、執務室内はとてもさっぱりとしています。
 オオボス侯爵家の調度品は今のところ押収対象外なので、執務室内に適度に配置しています。
 そして、僕たちを待っていた執事と共に応接セットのソファーに座って、今後の予算について話し合います。

「本年の予算については確保しておりますので、公共工事等含めて問題なく実施する予定となっております。来年以降につきましてはまだ何とも申し上げられませんが、本年とほぼ同じ予算を計画しております」
「ふむ、良くまとまっている。オオボス侯爵領は広大だから、このくらいの予算は致し方ない。後は、如何に無駄なく執行するのと税収を上げるのが課題だな」
「恐れ入ります。領内の人口も年々増えておりますので、開墾計画を策定いたします」

 執事は、分かりやすくまとまっている予算書を見せてくれました。
 ヘンリーさんも感心する出来で、僕にもとっても分かりやすいです。
 ヘンリーさんは直ぐ様王城にオオボス侯爵家の予算案について連絡したけど、王城からも特に問題ないと連絡が入りました。
 予算関係は、これで大丈夫ですね。
 続いて、屋敷の使用人の陣容の確認をします。

「領兵からの逮捕者は少ない為、治安維持に影響はございません。また、屋敷の使用人の三割が連行されましたが、元より勤務態度に問題のあった者が殆どになるのでこちらも影響は最小限となっております。現在の陣容にて屋敷の運営は可能ですが、若干名使用人の募集をかける予定となっております」
「その辺の采配は任せよう。何よりも、領内の安定が第一だ。必要な人員は揃えるように」

 元々領兵はオオボス侯爵と距離を取っていたらしく、その為にオオボス侯爵とラスボス司教は私兵を雇っていたそうです。
 しかし、本人達が穢れた血を飲んで強くなったと勘違いして、その私兵もジャマだと解雇しちゃったそうです。
 結局はオオボス侯爵とラスボス司教の勝手な思い込みなんだけど、それで影響が少なくなったんだよね。
 その他にも、様々な状況を執事から話を聞いて確認しました。
 勉強で知っていた知識もあるけど、こうして実際に数字を見ると勉強になるね。
 備品の購入状況とかも確認して、執事に確認する事は終わりました。
 いつの間にか時間が経っていて、気がついたら昼食の時間になっていました。
 僕とヘンリーさんとスラちゃんが揃って食堂に行くと、オオボス侯爵領の町に出ていた皆が既に食堂で昼食を食べていました。

「ナオ君、お疲れ様ね。真剣にヘンリーとスラちゃんから色々と教えて貰っていたから、折角なので終わるまで声を掛けなかったのよ」

 シンシアさんが僕に声をかけてくれたけど、実は一度執務室の様子を見に来てくれたそうです。
 僕は集中していて全く分からなかったけど、ヘンリーさんとスラちゃんは気がついていたそうです。
 うう、僕はまだまだですね……

「屋敷の事はある程度落ち着いたし、ナオ君も午後はエミリーと共に教会で治療をしてもらおう。気分転換も必要だ」
「ありがとうございます。流石に、頭の中が色々な事でパンパンです」
「ナオ君は真面目だから、頑張って覚えようと集中していたからね。慣れてくれば、肩の力も抜けてくるはずだよ」

 ヘンリーさんがニコリとしながら僕に午後の予定を教えてくれたけど、頑張って覚えようと集中した結果なんだよなあ。
 他の人達も、僕らしいって感じで僕の事を微笑ましく見ていました。
 ちなみに、教会での治療はトラブルなく順調で、町の巡回でも不審者を捕まえたりしていたそうです。
 ということで、午後は少し組み合わせを変えてエミリーさんとシアちゃんと一緒に教会で町の人向けに治療を行いました。
 たまに怪我をした兵も教会にやってきて治療をしたけど、ある程度は午前中のうちにドラちゃんが治療しているそうです。
 そして、巡回班にドラちゃんとスラちゃんが加わって、巡回ついでに廃墟の浄化をしたそうです。
 うーん、昨日は魔獣化したオオボス侯爵とラスボス司教との戦いでとても大変だったのに、一日経ってとても平和になっていますね。
 こうして、大きなトラブルもなく今日の活動を終えてオオボス侯爵領から王都に戻ってきました。
 オオボス侯爵領内では町の人の動揺も殆どなく、至って平穏だそうです。
 逆に、オオボス侯爵とラスボス司教が捕まって喜んでいる人もいるそうです。
 勝手な統治をしていたから、それだけ町の人に嫌われていたんですね。