この世の中では、車や自転車、バイクといった人間の移動に欠かせない乗り物が存在する。しかしその乗り物は、タイヤがないと動かない。そしてどうしたらタイヤで走らせられるようになるのか?答えは空気…ではなく、コーヒーだ。

 いつから世の中はこうなったんだろう。コーヒーをタイヤの中に注ぎ込んで車などを走らせるようになったのは。政府が突然このようなシステムに切り替え、最初は世間から非難の声が絶えなかったが、数年後にはみんな当たり前のように車に乗っていた。

 タイヤに入れるのが空気ではなくコーヒーになったことによって、どんな殺伐とした道路も快適に走れるようになり、運転の快適さと安全性が向上し、さらにタイヤ内部のコーヒーから車内にカフェインを充満させるスイッチがあり、このスイッチをオンにするだけでカフェインの匂いが車内に広がり、しゃきっとした状態で朝から仕事に臨める。そして夜や寝る前などのリラックスしたい時間にはスイッチをオフにし、カフェインを防ぐことができる。

 当然ながらタイヤ内のコーヒーが空になると、車を走らせることができない。だから定期的なコーヒーの注入は必要だ。でもみんなは何も気にすることなくコーヒーを注入する。それも1台あたり、3日に1回のペースで。

 「それにしても最近はみんな、仕事に対する活気がすごいなぁ…」

 こうしたメリットによって世間が良い方向に変化していくことを、僕は心の中で喜んでいた。…と思ったのもつかの間。

 最近は趣味であるカフェ巡りが全然できてない。もう大好きなカフェでコーヒー飲んだり、作業することは叶わないのか…。