いや、これは俺の自意識過剰なのかもしれない。
 
 そう信じたい自分が心のどこかに存在する。

 だけど、二人が向けてくる視線はあまりにも強烈で、考えがまとまらない。

 家族。

 もしかして、俺と理恵がこの二人の家族になるのであれば、二人に迷惑がかかるのではなかろうか。

 俺の存在意義がなくなるのではなかろうか。

 ずっと、俺が守ってきた何かが壊れてしまうのではないだろうか。

 そんな不安が渦巻く中、二人は俺の方に身を乗り出して上目遣いしてくる。

「祐介くん、来週の土曜日、時間大丈夫?」
「……まあ、多分大丈夫なはず」
「よかった。その時、祐介くんと理恵を家にお招きしたいの。日頃の感謝を込めてね」
「別に、俺は感謝されるようなことは……」

 俺が後ろ髪をガシガシしながら言うと、奈々が俺の顔に自分の顔を近づけて息を吐いた。

「ふふ、絶対来て」

 奈々の言葉が俺の耳に届き、熱い息は俺の鼻を通ってそのまま脳を痺れさせる。

 俺は目を逸らしたが、逸らした先には奈々の凶暴すぎる胸がデーンと存在感を主張するように微かに揺れて、甘い香りを漂わせる。

 シャツの上からはピンク色のブラが見え隠れしており、谷間は俺の視線を引き寄せた。

 いかん。

 見ちゃダメだ。

 俺は葛藤した。

「ふふ」

 そんな俺を、奈々は口角を吊り上げながら見つめている。

「くるよね?きたら、いいことがあるよ」
「いいこと……」
「そう。いいこと。みんなにとってこれ以上ない幸せ……」

 奈々の成せるオーラに俺は当てられた。

 友梨姉は、俺の顔を見ながら期待に満ちた青い目をキラキラさせている。

 二人の香りが完全に俺を酔わせた。

「ああ。行く」

 幸せ。

 それがなんなのか知らないけど、二人に強烈な視線を向けられると、断ることはできない。

 しかし、俺の存在意義を否定してはならない。

 そう肝に銘じていると、

「おおおお、お客さま、ご注文のブラックコーヒーをお持ちしました!」

 有紗姉は頬を赤くして、震える声でコーヒーを持ってきてくれた。

 そして、それらを俺たちのところへ運んで素早く立ち去る。

 二人はそんな有紗姉の後ろ姿を見て得意げな表情を浮かべてからコーヒーを飲む。

「苦い……」
「っ……」

 どうやら二人はブラックコーヒーが苦手らしい。

「苦いなら砂糖もってくるか?」

 と、問うも二人は妖艶な笑みを浮かべ、うち奈々が艶のある唇を動かす。

「ううん。これから(・・・・)好き(・・)にならないとね」

 妹の反応を見て友梨姉がコーヒーを一口飲んで微笑んだ。

「苦いもの……今後(・・)のために慣れておかないと」
 
 と言って、友梨姉は自分の細い指を唇に当てる。

「で、でも、あまり無茶はするんじゃないぞ」
 
 俺は心配になって行ったら、二人は目を細めて

「「大丈夫(・・・)」」
「っ!」

 なんか、健全な会話をしているつもりだが、二人の表情を見たら変な気持ちになってしまう。

 場の雰囲気を変える必要がありそうだ。

 そう思った矢先に、

「あ、いた!!お兄ちゃん!先輩!」

 理恵が現れた。

 二人はこれまで見せていた妖艶な姿はなく、至って平穏な面持ちだ。

「理恵ちゃん!!学級委員の仕事お疲れ様!ずっと待ってたよ!早く座って」
「は、はい!」

 奈々に案内されるがまま理恵は俺の隣に座った。

 そしたら友梨姉が微笑みを浮かべていう。

「理恵」
「はい!」
「来週の土曜日時間大丈夫かしら?祐介くんと一緒に私たちの家に来てほしいけれど」
「え?一緒ですか?」
「ええ。祐介くんのこれまでの頑張りを祝うパーティーをやりたいの」
「……」

 理恵は感動したように目をぱちぱちさせながら、俺と美人姉妹を交互に見てくる。

 二人が笑顔を向けると、理恵は嬉しそうに満面に笑みを浮かべた。

「もちろん行きます!お兄ちゃん……私、嬉しい……」
「理恵……なんでお前が喜ぶんだよ」

 戸惑いの混じったか顔で俺が問うと妹が目を潤ませつつ口を開いた。

「だって、妹として嬉しいじゃん……」
「……」
 
 感動する妹を見て、友梨姉が妹の頭を撫でる。

「兄想いのいい妹ね。ふふ」

 友梨姉の横にいる奈々は意味ありげな表情を作る。

「やっぱり家族っていいよね」

 それから俺たち四人は談笑を交わした。

 驚いたのは美人姉妹の妹への態度。

 本当に優しくて、まるで本当の妹のように理恵のことを気遣ってくれている。

 言葉の端々に理恵への優しさが見え隠れしていて、俺は何度も何度も感動してしまった。


X

姉妹side

 祐介と理恵と別れた二人は軽い足取りで家へと向かう。

 二人はスマホで祐介が自分たちを守ってくれた動画を見ている。

 なにかに取り憑かれた表情でひたすら画面を見つめる二人。

 周りの人たちは綺麗な二人を見て視線が釘付けになるが、ナンパや話しかけるものはいない。

 それほど二人はただならぬオーラを漂わせていた。

「お姉ちゃん……」
「なに」
「私、嫉妬したの初めて」
「ふふ、そうね。私もそういった感情とは縁が遠い人だと思ってたわ」
「祐介が他の女と話す姿、絶対見たくない。祐介の強さを見て祐介の子を孕みたいという願望絶対抱くじゃん」

 奈々が唇を噛み締める。

 そんな妹の肩に手を乗せて友梨がいう。

「奈々、私たちの姿を見てよからぬ感情を抱く男の人が多いように、祐介くんの強さ見てそういう感情を持つ雌豚がこれからいっぱい現れるのは当然よ」
「……祐介くんのことだからね」

 がっかりする奈々に友梨は耳元で囁く。

「恋って不思議よね。どうでもいい男はいっぱい寄ってくるけど、いい男とはなかなか思い通りにはいかない」
「……祐介を私たちの家に永遠に閉じ込めて、祐介にとっての女は私たちだけだと認識させたい」
「それは単なる奴隷じゃない」
「そうね」
「ふふ、祐介くんを奴隷にしたいなら、私たちも祐介の奴隷にならないとね」
「祐介の奴隷……」

 姉に言われた奈々は電気が走るように上半身をひくつかせて


「それ、めっちゃいい」




追記


次回、祐介の格好いい戦闘シーンがでます!

コミケに来てます

あづい

インドア派の私にはきつぃいい