リューゼリア率いるパーティー・戦慄の群狼の一員にして、斥候としてこの町に滞在中のミシェルさんを確保する。
 そして交渉の場を設け、新世界旅団と冒険者ギルド、戦慄の群狼が足並みを揃えてシミラ卿処刑阻止のために動く──そうでしないと十中八九、リューゼが暴走して怒りのままにエウリデ連合王国そのものを崩壊させにかかってしまうから。

 概ね以上の方針で僕達はさっそく動くことにした。新世界旅団たる僕達については、主に二手に分かれての行動となる。
 ここに残ってギルドとの連携、そしてシミラ卿を取り戻すための作戦を練る側と、ミシェルさんを探してリューゼとの交渉ラインを繋ぐ側とだね。
 人員の割り振りはもちろん団長がしてくれてるよー。

「ギルドとの連携の内容、及び処刑阻止に向けての動きを検討するのは私とモニカ、レリエで受け持つわ」
「参謀見習いとしては初仕事だね。気張らせてもらおうじゃないか」
「何ができるわけでもないけど、お茶くらいなら入れられるかも……が、頑張りまーす」

 主に作戦会議、話し合いを担当するのはシアンさんにモニカ教授にレリエさん。団長と参謀と古代文明の智慧をお持ちの知識人さんによる、インテリトリオだねー。

 モニカ教授は参謀見習いを自称していて、ゆくゆくは新世界旅団内でも参謀、ブレーン的な立ち位置を目指して頑張っていきたいみたいだ。
 調査戦隊時代は割と鳴り物入りで入団したものだから、すぐに誰もが認める大参謀役に落ち着いていた彼女だけれど……今回は完全に新参者としてのスタートとなる。

 信頼と実績を一から積み上げるなんて初めてかもしれないね、なんて笑っていたあたり心配ご無用って感じの余裕ぶりだよー。教授ならすぐに、団長を支える頭脳になってくれるだろうと期待しているよー。 

「ソウマくんとサクラはミシェルさんの捜索、および彼女と接触して交渉の場を設けてほしいわ。実際の交渉は私とソウマくんと……あと、ギルド長も参加でよろしいですか?」
「無論だとも。捜索のほうはうちからもパーティーを見繕っている。好きなように使っていいぞ、ソウマ」

 そしてもう片方。僕とサクラさんに加えてギルドが選定したパーティー、いわゆる実働チームによるミシェルさんの捜索だ。
 自分で言うのもなんだけど僕にしろサクラさんにしろ、頭脳関係はそんなに……だからね。小難しく考えるのはそれこそインテリチームに任せて、こっちはこっちで足を動かし手を動かし、場合によっては杭を打つなり刀を煌めかせるなりするのが適材適所ってやつなんだろう。

 ミシェルさんは元々僕と同じ孤児院出身ってこともあり、ある程度調べる宛があるのは助かる話だよー。
 当てずっぽうであちこちうろつかなくても済むのは大変大きい。僕はミシェルさん捜索の相方であるサクラさんへと告げた。
 
「なるべくさっさと探さなきゃね、時間も限られてるし」
「たしかソウマ殿と出身が同じなのでござったな。それではとりあえずそちらに向かうでござるか」
「そうだねー。あ、でも先に門番さんに確認を取るよ。ザンバー担いだ女の人が出入りしてないかーって。もしかしたらもう、町を出ちゃってるかもだしねー」
「あー、かもしれんでござるね。まずは町の中か外かにざっくり絞る。うん、理に適ってるでござる」

 焦りもあってついつい、さっそく孤児院に行きたくなるって場面だけれどここはちょっぴりの遠回りこそが最適解だろう。すなわち絞り込みだ。
 ミシェルさんと遭遇してからもう一週間くらいは経過している。この間、用事というか粗方の町の観察を済ませてカミナソールへと戻っていてもおかしくはないからねー。

 まだエウリデ国内をうろついている、とかだったら最悪でも僕が単身で空を飛んで確保に動けるけど……国境を出てたらさすがにそれも難しい。
 だからさしあたってはまず、この町を囲う砦の四方の門に行って、門番さんにミシェルさんらしき人が出入りしたかを聞くべきなのだ。いきなり孤児院をあたって、その間に彼女がエウリデの外に出てましたーなんて笑い事じゃないし。

 これは割と、スピード勝負にもなりかねない。
 ギルド長室で話し込んでる場合でもないかもねと、僕は杭打ちを担いで団長達へと言った。

「さしあたりミシェルさんの動向を確認して、可能な限り確保できるように僕らは動くよー。団長、教授、そちらは任せますー」
「ええ、任せてください。そちらもお気をつけて」
「ミシェルさんを確保できるか否かでこちらの策も変わる。なるべく早くの報告を期待するよ、杭打ちくん?」
「任せといてー。こう見えて人探しは結構得意なんだよー」
 
 教授のからかうような声にかるーく返す。
 人探しが得意なのは事実だ。迷宮攻略法の一つに感覚強化ってのがあるからねー。
 全身の感覚を強化するから、どこに誰がいるのかって探知には非常に便利なんだよー。