『 SATURDAY23s!


引き続き、HALUがお送りします。




さぁ、


ここでメールを1通ご紹介しましょう。































ラジオネーム・エリーさん。



HALUさん、こんばんは。


あたしは、この春から高校3年生になりました。




新しいクラスには、なんと入学以来憧れていた学校の王子様・Sくんがいたのです!



初めて同じクラスになれて、嬉しくて仕方がありません。



でも、せっかく同じクラスになれたのに、自分に自信がなくて話しかける事もできないんです。


HALUさん、

こんなヘタレな あたしに
どうかエールをお願いします!























う〜ん、

素敵ですねぇ。



高校生かぁ……私には、もう遠い昔ですが(笑)




うん、そうだなぁ。


私も今の年齢になってみて、学生の頃が1番楽しかったかも、なんて思う時があったりします。



そのくらい大切で かけがえのない、宝物みたいな時期なんですよね。





“今”という時間は“今”しかないから足踏みしてるのは、きっと勿体ない。



小さな一歩でいい、踏み出してみましょう。



そうして、初めて
時に甘酸っぱくて
時に ほろ苦い、
エリーさんだけの宝物みたいな物語が始まるんじゃないかな。



真っ白なページを描くのは、エリーさん自身なんだから。






エリーさん、番組特製ケータイストラップをお送りしますね。






それでは、ここで1曲。


エリーさんに

エールを込めて。



私、HALUの最新アルバム「MOON」から

「スプリング ハズ カム」。 』



















―ウザい。ウザい。ウザい。


どいつも、こいつも、死ねばいいのに。―












出席番号順、廊下側の一番前の席で あたしは溜め息を噛み殺した。




「それでね、映画の後でゲーセン行ったんだけどさ、UFOキャッチャーでコレ取ってくれたの!」


美帆は、自慢気にヌイグルミを見せる。




でも、あたしは そのウサギだか犬だかのキャラクターを知らない。





「へぇ。よかったじゃん。ステキな彼氏さんで羨ましいよ。」


期待していたであろう返事をすると、美帆は満足したように笑う。




あたしは、さらに食欲が萎えていく。



ついさっき、コンビニで買ってきたミルクパンは、まだ半分も残っていた。







「ていうか、そうだよ!あたしの話じゃなかったじゃ〜ん。エリの話でしょ!」


黒くて長い髪の毛先を弄りながら、美帆は言った。




「なんだっけ?」


「だから……昨日の告白。どうだったの?」



急に小声で話す美帆を眺めながら、あたしは半ば無理矢理ミルクパンを一口噛った。







この女……。












「どうにもなってないよ。」


「どうにも……って?」


「告んなかったもん。」




そう言ったあたしに、美帆は大袈裟に身を乗り出した。



「なにそれ?」


「呼び出したはいいけど、逃げたの。」





途端に美帆は、同情じみた目であたしを見た。






この女の何がキライかって、無神経な言葉と自己中さ、その哀れむような目だ。





「まっ、ヘタレなあたしらしいでしょ!」



中途半端な自虐ネタを言って、やり過ごす。



あたしの心には、ざらりとした感触が残った。




美帆は、まだ何か言いたげだったけど、さほど興味もないのだろう。


再び、昨日のデートの惚気話を事細かに報告してくれる。




その報告を、あたしは望んでいないというのに。






適当な相づちと愛想笑いをしながら、内心では腹が立って、苛立たしかった。




不機嫌である事が表情に出ないように努力してあげてるっていうのに、この女はそんな事にも気がつかないんだから呆れる。








しかし、イライラする原因がそれだけじゃない事をあたしは知っていた。




例えば、6月のジメジメとした空気だったり。



例えば、隣の席のメガネの、机の周りがいつも散らかっている事だったり。





もっと言えば、せっかく志木くんを呼び出したっていうのに逃げ出してしまった、人生初の告白の顛末だったり。




そして、なにが1番って、あのチビだ。



クラス1背が低い、クラス1巨乳の、あのバカ女。






積もった愚痴を心の中で吐き出していると、教室に校内放送が響き渡った。




「各クラスの学級委員に、お知らせします。

この後、
生徒会室で行われる予定のミーティングは視聴覚室に変更になりました。」





あぁ、うざい。






マジうざい。





貴重な昼休みだっていうのに。




どうして4ヶ月も先の文化祭について今から会議なんて、しなければならないのだろう。