「よかったのかね、恋敵にステファンを預けて」
マクミリア公爵の書斎でお茶を飲んでいると、不意にそう言われる。恋敵かぁ。なんだか楽しそうな響きではあるけど、私はあの子に勝てる気がしないなぁ。とても真剣な眼差しだったもの。
「私がいては、なにかと話しづらいのではと思いましたので」
「オリヴィアはよく気が付くな。私がもう少し若ければ、ステファンになど渡さなかったんだがなぁ」
ああ、言うよね。オッサンってそういうこと言うよねぇ~。会社にもいたよ、俺がもう少し若ければ俺の女にしてたのに、とかいうやつが! 冗談でしょ。あんたに選択権なんか、ありません!
「私、公爵様と結婚は出来ませんね」
にっこり笑って言っておく。呆気にとられた顔をした公爵は、続けて破顔した。
「あーっはっは、そうか、オリヴィアは私と結婚してくれないのか」
楽しそうに腹を抱え、笑う。
「私は駄目で、ステファンならいい理由があるなら知りたいが?」
カップを持ち上げ、にんまりと笑う。
「そんな……私は別に」
「ステファンが夫では、不服かな?」
意地悪く顔を覗き込まれ、思わず言い返す。
「そうではありませんっ。問題があるのは私の方なんですからっ」
「どうして? 好きな男がいた、というあれか?」
「……ええ。不誠実、ですよね?」
「そんなもの、ただ恋に恋していただけの話だろう? なにも問題はない」
スパン、と言い切られる。さすが恋多き人! きっとこの人なら、子供が出来てしまった、とでも言われない限り浮気も許しちゃうのかもしれないわね。
「……ところでオリヴィア嬢。私の嘘を見破ったというのは本当か?」
急に重要な話を持ち出され、驚く。プレストってば、私が嘘に気付いたってこと話しちゃったの? 黙ってればいいのにっ。
「えっと、帳簿の件……でしょうか?」
「帳簿だけではないだろう?」
……まぁ、そうだ。あんなことをするには理由がある、と思ったのは確か。いくら自由人とはいえ、なんでもかんでも好き放題やっている、というタイプではない。やるべきことはきちんとこなしている。その上で、自分に正直に生きているのだろう。
「……そうですね。あんな手の込んだことをしてまでステファン様にお相手を、と考えたのだとするなら、それは自分以外の後ろ盾を置くためであり、ステファン様を……一人にさせないためなのではないかと」
「ほぅ、なるほど」
顎を撫でつけ、感心したように息を漏らす。
「すべて憶測です」
「しかし、その憶測を導き出せたものはおらん。ステファンですら、気付かなかったのだ。よくあの帳簿の謎に気付いたな」
「そうですね。少しばかり、数字に強いもので……」
前世で直近、経理やってたからね。普通の事務職だったら気付かなかったと思うけど。四年間の不正帳簿は、五年目から正常な数字に戻っていた。そこに気付けないステファンにも問題あるわね。
「……で、このことはステファンに……?」
「もちろん、話してはおりません」
「どうして?」
は? だって内緒でやってるんでしょ? 私がバラしてどうするのよ?
「……公爵様には公爵様のお考えあってのことですよね? 私が口を出すことでは……」
「だが、借金がないとステファンが知れば、この婚約はせずにすんだではないか?」
「あ」
そうじゃん! 言っちゃえばよかったんじゃないのこれっ?
口を押える私を見て、公爵がまた笑う。
「うははは、オリヴィア嬢は本当に面白い! ステファンが気に入るわけだ」
「……はぁ」
気に入られたかったわけではないのだけどね。
「私の秘密を黙っていてくれたこと、礼を言う」
頭を下げるマクミリア公爵。
「そんなっ、私はただっ……公爵様のお気持ちを守りたかっただけで」
親が子を思う気持ち。それはとても温かいものだ。私の母が亡くなった時のことを思い出した。親は子の幸せを、最後の最後まで願っている。
「……オリヴィア嬢が私の秘密を守ってくれたように、私もオリヴィア嬢の秘密を守ると誓うぞ? なにか、思うことがあるなら言ってみなさい」
「え?」
優しい眼差しで見つめられ、私の心臓がどきりと音を鳴らす。
私の秘密……ここで打ち明ければ、正しい答えをもらえるだろうか? 私が困惑しているこの状況に、なんらかの答えを示してくれるだろうか?
「あの、私っ」
「オリヴィア・ルナール嬢! 私と勝負なさい!」
非常にセンシティブな会話の最中に、扉を開け放ち登場したのは、またもやユノリスカ。そのあとからステファンが姿を見せる。
「おい、ユノ!」
「ステファン様はすっこんでいてくださいっ。これは私とオリヴィア・ルナール嬢との勝負です!」
ピッと指をさされた私、脳内「???」ではあるけど……これって断れないやつなんだろうな、って直感が告げている。でも、勝負って……なに?
「あの、ユノリスカ様……勝負、とは?」
「決まってるでしょう? 私とあなた、どちらがステファン様の妻に相応しいかを決めるのですわ!」
……おおぅ、ジーザス。
◇
「ステファン様ぁ、お茶が入りましたの~! きゃっ」
どんがらがっちゃん、パリーン
「あらあら、お怪我はございませんか? ユノリスカ様」
あれから数日。
なにかにつけ勝負を挑んでくるユノリスカの相手を、私が一手に引き受けている状態だ。なんというか、ユノリスカという少女はラブコメ漫画に出てくる女の子そのものと言えばいいのか、とにかく騒ぎを起こすタイプのようである。ステファンの周りをちょろちょろしては、お茶をこぼしたり転んだり、大忙しだった。
私はそんなユノリスカのお世話をするのが、なんだかとても楽しくなっていた。
そう……ひっさしぶりに、労働してる~~~~! って感じなんだもん!
「もうっ、なんでオリヴィア様が片付けるのよっ! そんなの侍女の仕事でしょっ?」
「ですが、ユノリスカ様が怪我でもしたら大変ですもの」
廊下のど真ん中、割れたカップをトレイに乗せ、ユノリスカから遠ざける。万が一にも彼女に傷など付けては大変なことになる。
「……あ~あ、せっかくお茶……入れたのに」
むくれるユノリスカに、声を掛ける。
「ではもう一度お茶を淹れに行きましょう。ステファン様が好んでいるお茶がどれか、お教えいたしますよ?」
「ほんとっ?」
ぱあっと顔を輝かせるユノリスカは、なんだかとても可愛い。最近では、少し打ち解けてくれた感じもある。……思い込みかもしれないけど。
私は労働の喜びも手伝ってか、このままユノリスカ付きの侍女にしてもらえないだろうかなどと、半ば本気で考えながら厨房へと向かった。
屋敷での生活は、もちろん最高だ。屋敷の人も皆優しく、三食昼寝付き。しかしなんの労働もしないどころか、ステファンやマクミリア公爵に嘘までついて婚約者を続け、あわよくば結婚というのはやはり違う。ユノリスカが来てからは殊更、そう考えるようになった。
ステファンにはユノリスカがいる。元々、誰でもいいと言っていた結婚相手だもの。ユノリスカならば、ステファンをとても大切にしてくれる気がする。あんな風に思われ続けていれば、ステファンだっていつか彼女の一途さと素直さを可愛いと思って、心癒される日が来るに違いないわけで……。
…………あれ?
一瞬の息苦しさに、胸を押さえる。
これって……もしかして私……ユノリスカの魅力を前に、ときめいてる!?
ふっと笑みが漏れる。
「だって可愛いものね」
駄々洩れた言葉を聞き逃さなかったユノリスカが、立ち止まる。
「今、なんと?」
「あ……失礼しましたっ。つい、声が出てしまいまして」
「可愛いって言ったの? 私のこと?」
ズイッと身を乗り出し訊ねてくるユノリスカに、私は小さく頷いた。
「嘘っ。なんで恋敵であるあなたが、私を可愛いなんて思うのよっ?」
「……いえ、私は恋敵などではありませんから」
「はぁぁ? お前なんか相手にもならないって言いたいわけっ?」
勝手な解釈でヒートアップするユノリスカ。怒った顔もキュートだわ。
「そうではなく……。私は使者が到着し次第、ルナール家に戻ることになると思います。だから」
「ええっ? な、なななんで……? もしかして……私のせい?」
わなわなと体を震わせるユノリスカ。
ちょ、なんでよ。泣きそうな顔でそんなこと言うなんて、反則でしょ! ああん、もう、なんて可愛いの~! さっきまであんなに威張ってたのに!
「ユノリスカ様のせいではありません。私では不適任だというだけのことですから、お気になさらないでください。ね?」
「不適任って……なんで? だってあなた、公爵令嬢でしょうっ?」
「私がその肩書に見合っていないのです。……さ、お茶はこちらですよ」
厨房に入ると、慣れた手つきでお茶の準備を始める。中にいた侍女たちが慌てて手伝いを始めた。ステファンの好んでいるお茶を出し、ポットへ茶葉を入れる。ユノリスカが押し掛けてきてからのステファンは、領主庁には行かず屋敷の執務室で仕事をしている。この時間は濃い目のお茶がいいだろう。疲れているだろうことを考慮し、少しだけ甘くする。
「さぁ、これでよろしいかと。危ないので、運ぶのは侍女に任せましょうね。私は少し庭を散歩します。どうぞステファン様と素敵なお茶会を」
そう言い残し、そのまま外へ出た。
「……なんで行っちゃうの? は? 家に帰るって……なんでよっ。なんか、変。あの人、なにかが変なのよっ」
ユノリスカはドレスをぎゅっと握り締め、私の後ろ姿を睨んでいた。
マクミリア公爵の書斎でお茶を飲んでいると、不意にそう言われる。恋敵かぁ。なんだか楽しそうな響きではあるけど、私はあの子に勝てる気がしないなぁ。とても真剣な眼差しだったもの。
「私がいては、なにかと話しづらいのではと思いましたので」
「オリヴィアはよく気が付くな。私がもう少し若ければ、ステファンになど渡さなかったんだがなぁ」
ああ、言うよね。オッサンってそういうこと言うよねぇ~。会社にもいたよ、俺がもう少し若ければ俺の女にしてたのに、とかいうやつが! 冗談でしょ。あんたに選択権なんか、ありません!
「私、公爵様と結婚は出来ませんね」
にっこり笑って言っておく。呆気にとられた顔をした公爵は、続けて破顔した。
「あーっはっは、そうか、オリヴィアは私と結婚してくれないのか」
楽しそうに腹を抱え、笑う。
「私は駄目で、ステファンならいい理由があるなら知りたいが?」
カップを持ち上げ、にんまりと笑う。
「そんな……私は別に」
「ステファンが夫では、不服かな?」
意地悪く顔を覗き込まれ、思わず言い返す。
「そうではありませんっ。問題があるのは私の方なんですからっ」
「どうして? 好きな男がいた、というあれか?」
「……ええ。不誠実、ですよね?」
「そんなもの、ただ恋に恋していただけの話だろう? なにも問題はない」
スパン、と言い切られる。さすが恋多き人! きっとこの人なら、子供が出来てしまった、とでも言われない限り浮気も許しちゃうのかもしれないわね。
「……ところでオリヴィア嬢。私の嘘を見破ったというのは本当か?」
急に重要な話を持ち出され、驚く。プレストってば、私が嘘に気付いたってこと話しちゃったの? 黙ってればいいのにっ。
「えっと、帳簿の件……でしょうか?」
「帳簿だけではないだろう?」
……まぁ、そうだ。あんなことをするには理由がある、と思ったのは確か。いくら自由人とはいえ、なんでもかんでも好き放題やっている、というタイプではない。やるべきことはきちんとこなしている。その上で、自分に正直に生きているのだろう。
「……そうですね。あんな手の込んだことをしてまでステファン様にお相手を、と考えたのだとするなら、それは自分以外の後ろ盾を置くためであり、ステファン様を……一人にさせないためなのではないかと」
「ほぅ、なるほど」
顎を撫でつけ、感心したように息を漏らす。
「すべて憶測です」
「しかし、その憶測を導き出せたものはおらん。ステファンですら、気付かなかったのだ。よくあの帳簿の謎に気付いたな」
「そうですね。少しばかり、数字に強いもので……」
前世で直近、経理やってたからね。普通の事務職だったら気付かなかったと思うけど。四年間の不正帳簿は、五年目から正常な数字に戻っていた。そこに気付けないステファンにも問題あるわね。
「……で、このことはステファンに……?」
「もちろん、話してはおりません」
「どうして?」
は? だって内緒でやってるんでしょ? 私がバラしてどうするのよ?
「……公爵様には公爵様のお考えあってのことですよね? 私が口を出すことでは……」
「だが、借金がないとステファンが知れば、この婚約はせずにすんだではないか?」
「あ」
そうじゃん! 言っちゃえばよかったんじゃないのこれっ?
口を押える私を見て、公爵がまた笑う。
「うははは、オリヴィア嬢は本当に面白い! ステファンが気に入るわけだ」
「……はぁ」
気に入られたかったわけではないのだけどね。
「私の秘密を黙っていてくれたこと、礼を言う」
頭を下げるマクミリア公爵。
「そんなっ、私はただっ……公爵様のお気持ちを守りたかっただけで」
親が子を思う気持ち。それはとても温かいものだ。私の母が亡くなった時のことを思い出した。親は子の幸せを、最後の最後まで願っている。
「……オリヴィア嬢が私の秘密を守ってくれたように、私もオリヴィア嬢の秘密を守ると誓うぞ? なにか、思うことがあるなら言ってみなさい」
「え?」
優しい眼差しで見つめられ、私の心臓がどきりと音を鳴らす。
私の秘密……ここで打ち明ければ、正しい答えをもらえるだろうか? 私が困惑しているこの状況に、なんらかの答えを示してくれるだろうか?
「あの、私っ」
「オリヴィア・ルナール嬢! 私と勝負なさい!」
非常にセンシティブな会話の最中に、扉を開け放ち登場したのは、またもやユノリスカ。そのあとからステファンが姿を見せる。
「おい、ユノ!」
「ステファン様はすっこんでいてくださいっ。これは私とオリヴィア・ルナール嬢との勝負です!」
ピッと指をさされた私、脳内「???」ではあるけど……これって断れないやつなんだろうな、って直感が告げている。でも、勝負って……なに?
「あの、ユノリスカ様……勝負、とは?」
「決まってるでしょう? 私とあなた、どちらがステファン様の妻に相応しいかを決めるのですわ!」
……おおぅ、ジーザス。
◇
「ステファン様ぁ、お茶が入りましたの~! きゃっ」
どんがらがっちゃん、パリーン
「あらあら、お怪我はございませんか? ユノリスカ様」
あれから数日。
なにかにつけ勝負を挑んでくるユノリスカの相手を、私が一手に引き受けている状態だ。なんというか、ユノリスカという少女はラブコメ漫画に出てくる女の子そのものと言えばいいのか、とにかく騒ぎを起こすタイプのようである。ステファンの周りをちょろちょろしては、お茶をこぼしたり転んだり、大忙しだった。
私はそんなユノリスカのお世話をするのが、なんだかとても楽しくなっていた。
そう……ひっさしぶりに、労働してる~~~~! って感じなんだもん!
「もうっ、なんでオリヴィア様が片付けるのよっ! そんなの侍女の仕事でしょっ?」
「ですが、ユノリスカ様が怪我でもしたら大変ですもの」
廊下のど真ん中、割れたカップをトレイに乗せ、ユノリスカから遠ざける。万が一にも彼女に傷など付けては大変なことになる。
「……あ~あ、せっかくお茶……入れたのに」
むくれるユノリスカに、声を掛ける。
「ではもう一度お茶を淹れに行きましょう。ステファン様が好んでいるお茶がどれか、お教えいたしますよ?」
「ほんとっ?」
ぱあっと顔を輝かせるユノリスカは、なんだかとても可愛い。最近では、少し打ち解けてくれた感じもある。……思い込みかもしれないけど。
私は労働の喜びも手伝ってか、このままユノリスカ付きの侍女にしてもらえないだろうかなどと、半ば本気で考えながら厨房へと向かった。
屋敷での生活は、もちろん最高だ。屋敷の人も皆優しく、三食昼寝付き。しかしなんの労働もしないどころか、ステファンやマクミリア公爵に嘘までついて婚約者を続け、あわよくば結婚というのはやはり違う。ユノリスカが来てからは殊更、そう考えるようになった。
ステファンにはユノリスカがいる。元々、誰でもいいと言っていた結婚相手だもの。ユノリスカならば、ステファンをとても大切にしてくれる気がする。あんな風に思われ続けていれば、ステファンだっていつか彼女の一途さと素直さを可愛いと思って、心癒される日が来るに違いないわけで……。
…………あれ?
一瞬の息苦しさに、胸を押さえる。
これって……もしかして私……ユノリスカの魅力を前に、ときめいてる!?
ふっと笑みが漏れる。
「だって可愛いものね」
駄々洩れた言葉を聞き逃さなかったユノリスカが、立ち止まる。
「今、なんと?」
「あ……失礼しましたっ。つい、声が出てしまいまして」
「可愛いって言ったの? 私のこと?」
ズイッと身を乗り出し訊ねてくるユノリスカに、私は小さく頷いた。
「嘘っ。なんで恋敵であるあなたが、私を可愛いなんて思うのよっ?」
「……いえ、私は恋敵などではありませんから」
「はぁぁ? お前なんか相手にもならないって言いたいわけっ?」
勝手な解釈でヒートアップするユノリスカ。怒った顔もキュートだわ。
「そうではなく……。私は使者が到着し次第、ルナール家に戻ることになると思います。だから」
「ええっ? な、なななんで……? もしかして……私のせい?」
わなわなと体を震わせるユノリスカ。
ちょ、なんでよ。泣きそうな顔でそんなこと言うなんて、反則でしょ! ああん、もう、なんて可愛いの~! さっきまであんなに威張ってたのに!
「ユノリスカ様のせいではありません。私では不適任だというだけのことですから、お気になさらないでください。ね?」
「不適任って……なんで? だってあなた、公爵令嬢でしょうっ?」
「私がその肩書に見合っていないのです。……さ、お茶はこちらですよ」
厨房に入ると、慣れた手つきでお茶の準備を始める。中にいた侍女たちが慌てて手伝いを始めた。ステファンの好んでいるお茶を出し、ポットへ茶葉を入れる。ユノリスカが押し掛けてきてからのステファンは、領主庁には行かず屋敷の執務室で仕事をしている。この時間は濃い目のお茶がいいだろう。疲れているだろうことを考慮し、少しだけ甘くする。
「さぁ、これでよろしいかと。危ないので、運ぶのは侍女に任せましょうね。私は少し庭を散歩します。どうぞステファン様と素敵なお茶会を」
そう言い残し、そのまま外へ出た。
「……なんで行っちゃうの? は? 家に帰るって……なんでよっ。なんか、変。あの人、なにかが変なのよっ」
ユノリスカはドレスをぎゅっと握り締め、私の後ろ姿を睨んでいた。



