「お前は何がほしい」
「……え?」
「俺から贈ったものに紗子が心から喜んでいるようには見えなかった」
「いえ。そんなことは……」
ないとも、はっきり答えられなかった。
自分のために凌雅が何かをしようとしてくれていることに喜びよりも戸惑いが勝っているのは事実だし、気後れもしている。
それ以上に自分が何を欲しいのか改めて問われても、何も答えが思い浮かばない。
ふと、その時、亡き母の顔が過ぎった。
幼い頃、発熱した自分の手を握り、優しく微笑んでくれた母。
母を亡くした後、ずっと傍で支えてくれた祖母も。
2人とも他界してしまい、二度と会えない。
祖母が亡くなってから、紗子は14歳にして一人で生きていくことを覚悟した。
誰かに頼らなくても暮らせるように、自分の力でしっかりと立っていられるように。
そのための倹約や学業への努力は惜しまなかった。
天華で”ザコ”と皆から蔑まれ虐げられても、卒業して自活する。
その目的のために、紗子は歯を食いしばって耐えてきた。
けれど、たまに誰かへ凭れたくなるほどに心細くなる時もある。
「……愛されたい……のかもしれません……」
気づけば、紗子の自然と桃色に色づく唇から、そんな本音が零れていた。
紗子は、はっとした。
自分でも気がつかなかった本心であり、口にしてしまうつもりはなかった。
「今のは……」
紗子が凌雅の顔を窺った時、先ほどまでの余裕と自信に満ちた笑みは逸していた。
凌雅の美しい顔は予想外の出来事に遭遇したかのように驚きを隠せない様子でいる。
紗子はいたたまれない気持ちになっていた。
自分に求婚している殿方に。
ましてや天上界の皇太子殿下に、愛を乞うような真似をするなどと。
(自分の力で生きていくと決めたはずなのに……)
「申し訳ございません。凌雅様に変なことを申してしまいました。どうかお忘れください」
紗子の謝罪に凌雅は答えなかった。
ただ、何かを紗子へと言いかけるように唇を開き、そして再び閉じ合わせる。
むせ返るような薔薇の香りに包まれる温室で、凌雅と紗子は無言で見つめ合っていた。
「……え?」
「俺から贈ったものに紗子が心から喜んでいるようには見えなかった」
「いえ。そんなことは……」
ないとも、はっきり答えられなかった。
自分のために凌雅が何かをしようとしてくれていることに喜びよりも戸惑いが勝っているのは事実だし、気後れもしている。
それ以上に自分が何を欲しいのか改めて問われても、何も答えが思い浮かばない。
ふと、その時、亡き母の顔が過ぎった。
幼い頃、発熱した自分の手を握り、優しく微笑んでくれた母。
母を亡くした後、ずっと傍で支えてくれた祖母も。
2人とも他界してしまい、二度と会えない。
祖母が亡くなってから、紗子は14歳にして一人で生きていくことを覚悟した。
誰かに頼らなくても暮らせるように、自分の力でしっかりと立っていられるように。
そのための倹約や学業への努力は惜しまなかった。
天華で”ザコ”と皆から蔑まれ虐げられても、卒業して自活する。
その目的のために、紗子は歯を食いしばって耐えてきた。
けれど、たまに誰かへ凭れたくなるほどに心細くなる時もある。
「……愛されたい……のかもしれません……」
気づけば、紗子の自然と桃色に色づく唇から、そんな本音が零れていた。
紗子は、はっとした。
自分でも気がつかなかった本心であり、口にしてしまうつもりはなかった。
「今のは……」
紗子が凌雅の顔を窺った時、先ほどまでの余裕と自信に満ちた笑みは逸していた。
凌雅の美しい顔は予想外の出来事に遭遇したかのように驚きを隠せない様子でいる。
紗子はいたたまれない気持ちになっていた。
自分に求婚している殿方に。
ましてや天上界の皇太子殿下に、愛を乞うような真似をするなどと。
(自分の力で生きていくと決めたはずなのに……)
「申し訳ございません。凌雅様に変なことを申してしまいました。どうかお忘れください」
紗子の謝罪に凌雅は答えなかった。
ただ、何かを紗子へと言いかけるように唇を開き、そして再び閉じ合わせる。
むせ返るような薔薇の香りに包まれる温室で、凌雅と紗子は無言で見つめ合っていた。



