後宮の【女千人】と呼ばないで!  〜最強の武装女官は、再会した幼馴染の近衛少将に溺愛される〜

 射的場で片付けをする。弓削燈子(ゆげとうこ)は無気味な笑みを浮かべながらも黒ずんだ血で汚れた組み紐を大事そうに包んでいた。桐壺(きりつぼ)の女御(にょうご)の身代わりの女官が身につけていた衣装には興味がないようで、処分は織葉(おりは)が行うことになった。颯登(はやと)は放った矢の片付けを行った。
「ところで」と燈子が織葉と颯登に顔を向けた。「私がやったことは内密にして下さいね。こんな呪術が使えたら戦(いくさ)に駆り出されるかもしれないし、此度(こたび)の事件に関与していると疑われかねないから」
「そうね、だから私が話を聴くわ」
「ええ!?」
「検非違使(けびいし)の過酷な詮議(せんぎ)を受けるよりは良いでしょう?」
「それはどうだかな」
 颯登が笑う。
 燈子はおののいた。
「尚侍(ないしのかみ)さまにご報告申し上げなければならないのよ。矢はどこから射ても的(まと)に当てることができると。そのためにはこの呪術のことも内密にはできないよね。大丈夫。優しく聴いてあげるから」
 たとえ顔見知りでも容疑者から外すわけにはいかない。燈子の呪術については武官たちには内密にするつもりだったが。