青の果てへと泳ぐきみへ

 


 再び目を開いた時、わたしは硬い岩の上に横たわっていた。
 体を起こし、辺りを見渡す。日が落ちかけた空。すぐ頭上に佇む白い灯台。凪いだ海は少し色を濃くし、遠くから海鳥の声が聴こえてくる。
 ぐっしょりと濡れた制服を着たまま寝ていたのは、慣れ親しんだ岬の岩場だった。

 ……なんだか、長い夢を見ていたみたいだ。
 頭がぼうっとして、上手く回らない。わたしはこんなところで何をしているのだろう。

「七瀬……」

 回らない頭で必死に記憶を手繰り寄せ、昼間まで一緒にいたはずの友人の名前を呼ぶ。
 しゃがれてか細くなった声が、静かな海に弱々しく響いて消えていく。

「七瀬、どこ……?」

 返事はない。声が小さすぎて、聞こえないのかもしれない。もしくは、もう帰ってしまったのかも。
 ぱしゃ、と足元で岩に当たった海水が跳ね、びくりと大袈裟なくらいに肩が震える。

「ななせ……」

 水に触れないよう足を少し体のほうに引こうとしたけれど、力が入らない。
 波があるわけじゃない。風もあまり吹いていない。海はこんなに穏やかなのに。
 ……あぁやっぱり彼がいないと、わたしは海がこわい。
 もう帰りたい。でも立ち上がれない。こわくて、心細くて、鼻の奥がつんとする。
 堪えきれず嗚咽が込み上げてきたその時。

「佐波、俺ここにいる」

 わたしがへたり込んでいる場所よりももう少し沖寄りの岩場の陰から、待ち焦がれた声が聞こえた。

「……ななせ?」
「うん、佐波の近くにちゃんといるから」
「ななせ、こっち、来て」

 涙で震えて、小さな子どもみたいな声が出る。
 七瀬の気配にほっとした。でもまだ足りない。そんなに離れた岩陰じゃなくて、顔の見えるところまで来てほしい。
 わたしの隣に、来てほしい。

「……や、悪いけどちょっとそれは無理」
「なんで! はやくこっち来てよぉ……っ!!」

 無理って、どうして。
 姿の見えない彼の言葉にまた心細くなって、わたしは声を張り上げた。ほとんど絶叫だ。でも声が枯れているせいでそれほど大きくは響かない。

 「ななせぇ、ひとり、いやだぁ……っ」

 静かな海に溶けていく自分の声が、かえって不安を煽る。
 いやだ、こわい。七瀬がいないと、その手で触れてくれないと、さみしくてたまらない。