恋人なら、一番がいい

 家に帰ると、部屋の明かりもつけずにベッドへ座った。
 静かだった。
 家族の話し声が遠くから聞こえてくる。
 いつもと何も変わらない夜だった。
 なのに、胸の奥がずっと苦しかった。
 スマホを手に取る。
 悠真からの連絡は、やっぱりなかった。

「……なんで」

 小さくつぶやいた声は、誰にも届かなかった。
 私から連絡すればいい。
 仲直りしたいなら、私から謝ればいい。
 そんなことはわかっていた。
 さっき、あんな言い方をしたのは私だ。
 悠真だって、困っていたはずだ。
 友達と遊ぶことを責めたいわけじゃなかった。
 友達を大切にする悠真のことも、嫌いになったわけじゃない。
 それなのに、どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。
 どうして、素直に「会いたかった」と言えなかったんだろう。
 考えれば考えるほど、何が正しかったのかわからなくなった。
 目の奥が熱くなった。
 慌てて目元をこすったけれど、一度あふれた涙は止まらなかった。

「……会いたいだけなのに」

 声に出した途端、余計に涙がこぼれた。
 会いたかった。
 ただ、一緒にいたかった。
 悠真と話したかったし、今日あったことを聞きたかった。
 もっとお互いのことを知って、今よりも近い存在になりたかった。
 でも、それを望むことは、悠真にとって負担なのだろうか。
 恋人だからって、友達よりも優先してほしいと思うのは、わがままなのだろうか。
 それとも、私はただ、悠真にとって自分がどれくらい大切な存在なのか、確かめたかっただけなのだろうか。
 わからなかった。
 自分の気持ちさえ、ちゃんとわからない。
 スマホの画面が暗くなる。
 私はそれを枕元に置いて、膝を抱えた。
 悠真が悪いわけじゃない。
 それは、何度考えてもわかっていた。
 でも、わかっているのに、寂しかった。
 わかっているのに、悲しかった。
 涙を拭いても、次から次へとあふれてくる。
 私はその夜、しばらく泣き続けた。