おにぎり


 それは四月の三番目の火曜日のこと。

 まだ近所の公園には桜が咲き誇っていて、過ごしやすい気温になってきた頃であった。

 その日は風が強くて、髪をセットして出かけた。

 クセ毛がある私はすぐ家に出たら、冷たい手で頬を叩くように風がビュ―と私の後ろまで強く吹いた。

 だから髪に鳥の巣があるんじゃないかってほどボサボサになった。

 風の昔を聞きながら、私は去年亡くなった祖母のことを思い出した。

 私は祖母からおにぎりというのは愛情がこもった料理だと教わった。

 だが祖母はこうも言った。

 愛情がないおにぎりっていうのは、食べた瞬間、作ってもらった人の温もりが感じられないんだよ。

 だからおにぎりを握る時は、どんな人を思い浮かべるか重要だと思うんだよ。

 茉莉、大切な人が出来たらどんな思いで握るかを大切にして。

 祖母が亡くなって以来、父は家族との団らんが必要だとやっと気づいたようで食事は家族揃って食べようという決まりになった。
 
 だが、両親ともに共働きで家族揃って食べることなんて一度も叶えられていない。

 あの人達は本当の私なんて知らない。

 私の家族は良い子、気遣い上手と思われているだろう。だが正反対だ。

 良い子でなければ、気遣いでもない。

 はっきりものを言えない性格だから。

 心の中で毒を吐いている。

 祖母の思い出に浸りながら道の角を曲がって、家から近いバス停で時間になるのを待っていた。

 七時五十分のバスで学校に行く時はよく使う。その時間は、大抵同じ人が乗ってくる。

 五十代くらいのおばさんと若めのサラリ―マン。