部屋に戻って、私はすぐにベッドに身を投げた。
「はあー」
大きなため息をついて、そのまま大の字になる。
自分の部屋。唯一心が休まる場所だ。
本棚に敷き詰められた小説や漫画。ベッドの上に並べられたお気に入りのぬいぐるみたち。少しずつ集めているカプセルトイのマスコットのコレクション。いい香りのアロマディフューザー。
ここは好きな物だけに囲まれた、誰からも侵害されない私の城。この四畳半の城から、できれば一歩も出たくない。だけど、生きていくには、そういう訳にはいかない。
「なんでこんなにモヤモヤするんだろう」
天井をぼんやりと見ながら、私は呟いた。
私のモットーは、目立たず平穏に生きること。
私には、勉強が特別できるとか、運動神経が凄く良いとか、アーティスティックな才能があるとか、突出した何かがある訳ではない。そりゃ、少しは憧れるし、そういう自分だったらと想像してみたりするけれど、やっぱり平凡で、普通で、ありきたりな、ありふれた高校生でいたいと思う。
目立たず平穏に生きるためには、まず、争いごとを避けなければならない。人とぶつかり合うのは嫌いだし、ギスギスした雰囲気は今すぐにでも逃げ出したくなる。
部活でもよくある。一つの目標に向かって切磋琢磨するのは素晴らしいことだと思う。でも、その過程で、やはり集団行動の弊害が出てくる。人が集まれば集まる分だけ対立は生まれる。
だったら部活を辞めたら良い話だ。集団から外れたら、少しは楽になる。だけど、私にはそれが出来ない。一度入ったコミュニティから抜けるだけで、また、そこに蟠りが生まれてしまうのだから。
人と関わる中で、衝突を生まないためには、自分の意見や気持ちは押し殺すのが一番手っ取り早い方法だ。私が我慢すれば、誰にも迷惑かけないし、丸く収まる。
多数決では、多そうな方に票を入れるし、意見を求められても、当たり障りのないことを言う。
目立たず平穏でいるためには、マジョリティである必要がある。部活に入ったのだって、周りのみんなが入っているからだ。
つくづく思う。私は臆病なのだと。
だから常に周りの目を気にしてばかりで、些細なことが気になって、落ち込んで、ネガティブになっていく。
自分を押し殺して手に入れる平穏は、結局は上辺だけ。私の心の中はグチャグチャだ。息苦しくて、仕方がない。
周りの人や環境には恵まれているはずなのに、まるで私はひとりぼっち。 大勢の中にいるほど、孤独感は増していく。
先が思いやられる。私はこの先どうなるのだろう。大人になったら、こんな性格も変わっているだろうか。もっと自然に、息が吸えるようになっているだろうか。
気を取り直して、私は机へと移動し、宿題を始める。先生に怒られるのは嫌だから、宿題も予習もしっかりやる。たまに友達が、私のをあてにして、写させてって言ってくるけど、断ったりはしない。私が昨日頑張って終わらせた時間を、ただであげなきゃいけないというのは癪に触るが、私は快く見せてあげる。平穏の代償だと思って。
明日はカズキのお迎えに行かなきゃいけないから、今日は夜遅くまで勉強を頑張ろうと思った。
英語の勉強をしようと思って教科書を開くと、今日の英語の授業中に当てられて間違えた時のことが蘇ってきた。
「あー、やだやだやだ」
私を頭を抱えて悶える。集中出来ない。
そんな誰にでもありそうな他人の些細なミスなんて、明日には誰も覚えてないだろうけど、恥ずかしくて仕方がない。早く忘れたい。だけど、この英語の教科書を開く度に、しばらくあの瞬間が思い出されるんだろうなと思うと憂鬱だった。
先生は間違ってもいいと言うけれど、私は間違いたくないし、私にとって間違いはマイナスだ。目立つし、恥ずかしいし、こんなのも分からないのかって周りに思われてるかもしれないし。正解した時よりも、考えないといけないことが色々増えるから。
本当に、私はどうしたらいいの。
もっと堂々とできたら、この漠然とした不安は無くなるのだろうか。
例えば、同じクラスにいる丸山さんとか。
私と真逆の人物を想像した時、頭に浮かんだのが彼女であった。きっと彼女は、こんな風にウジウジ考えたりはしないんだろうなと思う。
丸山さんは、いつもクラスの中心にいて、ハキハキしてて、気が強そうで、何にも動じない。男女問わず仲良くて、いつも楽しそうにしている。
中学も同じだったけれど、同じクラスになるのは高校2年生が初めてで、会話という会話はほとんどしたことはない。
雲の上の存在で、むしろ怖いまである。
きっと、一生関わる機会はないんだろうな。
だけど、羨ましい。彼女みたいになれたら、生きることが少しは楽になるかもしれないのに、と思った。
「はあー」
大きなため息をついて、そのまま大の字になる。
自分の部屋。唯一心が休まる場所だ。
本棚に敷き詰められた小説や漫画。ベッドの上に並べられたお気に入りのぬいぐるみたち。少しずつ集めているカプセルトイのマスコットのコレクション。いい香りのアロマディフューザー。
ここは好きな物だけに囲まれた、誰からも侵害されない私の城。この四畳半の城から、できれば一歩も出たくない。だけど、生きていくには、そういう訳にはいかない。
「なんでこんなにモヤモヤするんだろう」
天井をぼんやりと見ながら、私は呟いた。
私のモットーは、目立たず平穏に生きること。
私には、勉強が特別できるとか、運動神経が凄く良いとか、アーティスティックな才能があるとか、突出した何かがある訳ではない。そりゃ、少しは憧れるし、そういう自分だったらと想像してみたりするけれど、やっぱり平凡で、普通で、ありきたりな、ありふれた高校生でいたいと思う。
目立たず平穏に生きるためには、まず、争いごとを避けなければならない。人とぶつかり合うのは嫌いだし、ギスギスした雰囲気は今すぐにでも逃げ出したくなる。
部活でもよくある。一つの目標に向かって切磋琢磨するのは素晴らしいことだと思う。でも、その過程で、やはり集団行動の弊害が出てくる。人が集まれば集まる分だけ対立は生まれる。
だったら部活を辞めたら良い話だ。集団から外れたら、少しは楽になる。だけど、私にはそれが出来ない。一度入ったコミュニティから抜けるだけで、また、そこに蟠りが生まれてしまうのだから。
人と関わる中で、衝突を生まないためには、自分の意見や気持ちは押し殺すのが一番手っ取り早い方法だ。私が我慢すれば、誰にも迷惑かけないし、丸く収まる。
多数決では、多そうな方に票を入れるし、意見を求められても、当たり障りのないことを言う。
目立たず平穏でいるためには、マジョリティである必要がある。部活に入ったのだって、周りのみんなが入っているからだ。
つくづく思う。私は臆病なのだと。
だから常に周りの目を気にしてばかりで、些細なことが気になって、落ち込んで、ネガティブになっていく。
自分を押し殺して手に入れる平穏は、結局は上辺だけ。私の心の中はグチャグチャだ。息苦しくて、仕方がない。
周りの人や環境には恵まれているはずなのに、まるで私はひとりぼっち。 大勢の中にいるほど、孤独感は増していく。
先が思いやられる。私はこの先どうなるのだろう。大人になったら、こんな性格も変わっているだろうか。もっと自然に、息が吸えるようになっているだろうか。
気を取り直して、私は机へと移動し、宿題を始める。先生に怒られるのは嫌だから、宿題も予習もしっかりやる。たまに友達が、私のをあてにして、写させてって言ってくるけど、断ったりはしない。私が昨日頑張って終わらせた時間を、ただであげなきゃいけないというのは癪に触るが、私は快く見せてあげる。平穏の代償だと思って。
明日はカズキのお迎えに行かなきゃいけないから、今日は夜遅くまで勉強を頑張ろうと思った。
英語の勉強をしようと思って教科書を開くと、今日の英語の授業中に当てられて間違えた時のことが蘇ってきた。
「あー、やだやだやだ」
私を頭を抱えて悶える。集中出来ない。
そんな誰にでもありそうな他人の些細なミスなんて、明日には誰も覚えてないだろうけど、恥ずかしくて仕方がない。早く忘れたい。だけど、この英語の教科書を開く度に、しばらくあの瞬間が思い出されるんだろうなと思うと憂鬱だった。
先生は間違ってもいいと言うけれど、私は間違いたくないし、私にとって間違いはマイナスだ。目立つし、恥ずかしいし、こんなのも分からないのかって周りに思われてるかもしれないし。正解した時よりも、考えないといけないことが色々増えるから。
本当に、私はどうしたらいいの。
もっと堂々とできたら、この漠然とした不安は無くなるのだろうか。
例えば、同じクラスにいる丸山さんとか。
私と真逆の人物を想像した時、頭に浮かんだのが彼女であった。きっと彼女は、こんな風にウジウジ考えたりはしないんだろうなと思う。
丸山さんは、いつもクラスの中心にいて、ハキハキしてて、気が強そうで、何にも動じない。男女問わず仲良くて、いつも楽しそうにしている。
中学も同じだったけれど、同じクラスになるのは高校2年生が初めてで、会話という会話はほとんどしたことはない。
雲の上の存在で、むしろ怖いまである。
きっと、一生関わる機会はないんだろうな。
だけど、羨ましい。彼女みたいになれたら、生きることが少しは楽になるかもしれないのに、と思った。


