「おかえり〜。晴くんもう帰っちゃったよ〜?」
帰宅すると、後片付けをしながら母さんが迎えてくれた。
「そう」
「晴くん、市内の公立大学目指したいって。指定校もあるらしいし、二人で──」
「あのさ!」
「なに、急に大きな声だして」
「あのさ、聞いて欲しいんだけど」
※※※
遮るものも何も無いこの町で、夕焼け空はどこよりも綺麗なのに、そんなことすらどうでもいいと目を背けるほどには何も上手くいかなくて。
世界のどこかで始まった争い事も他人事に思えてしまうほどには恵まれていて。
今にも雨が降りそうな厚い雲で覆われた星も月も見えない夜空を見上げた時の方が、ずっと僕は安心できた。
そんな寂しい時にこれでもかと上げた音量で聞く音楽は、唯一生きていける理由だった。
周りを見てはなんでいつも僕ばっかりと落胆して。
僕を想ってくれる人を見てはいつも僕がそんな顔をさせているんだと嫌になった。
「三月おはよう」
「おはよう晴哉」
「今日進路希望調査票提出だけどちゃんと書いた?」
「書いたよもう。お節介だな」
「まだあと1年半あるとはいえ、進路希望って言葉が出てくるとちょっと引き締まるよなあ」
「そうだね」
「俺公立受かると思う?」
「1年あるんだし、受かるんじゃない?」
「なんだよその他人事みたいな言い方は〜。勉強出来るからって余裕か」
今日からブレザーは着なくてもいい期間。
だから、僕はシャツ1枚で登校した。
晴哉はシャツの中に部活の練習着を着ている。多分この後怒られるまでがセット。
「おーみんなブレザー脱いでるじゃん」
「ブレザーなんか着たい人の方が少ないよ」
教室に入るとすっかり夏仕様になったクラスメイトで賑わっていた。
僕は自分の席にカバンを置いて、椅子を引こうと前屈みになる。
「三月、お前鎖骨どうした?」
「え?」
「なんか、赤いっていうか」
「あ〜これ。僕のヒーローと同じやつ」
「同じやつってそれ、ピアス───」
晴哉の言葉を遮るようにして、教室に入ってきた担任の声が響いた。
「進路希望提出しろー」
「行こ、晴哉」
「いや、三月それ」
「あと、僕こっちにしたから」
真っ直ぐピンと張って重なった紙の上に、僕の紙を重ねた。
ヨレヨレで弱々しい、進路希望調査票。
第1希望に『音楽の専門学校』と記入した。
今日からまた、より一層、小さな光の粒をばら蒔いては集めてを繰り返す毎日になる。
帰宅すると、後片付けをしながら母さんが迎えてくれた。
「そう」
「晴くん、市内の公立大学目指したいって。指定校もあるらしいし、二人で──」
「あのさ!」
「なに、急に大きな声だして」
「あのさ、聞いて欲しいんだけど」
※※※
遮るものも何も無いこの町で、夕焼け空はどこよりも綺麗なのに、そんなことすらどうでもいいと目を背けるほどには何も上手くいかなくて。
世界のどこかで始まった争い事も他人事に思えてしまうほどには恵まれていて。
今にも雨が降りそうな厚い雲で覆われた星も月も見えない夜空を見上げた時の方が、ずっと僕は安心できた。
そんな寂しい時にこれでもかと上げた音量で聞く音楽は、唯一生きていける理由だった。
周りを見てはなんでいつも僕ばっかりと落胆して。
僕を想ってくれる人を見てはいつも僕がそんな顔をさせているんだと嫌になった。
「三月おはよう」
「おはよう晴哉」
「今日進路希望調査票提出だけどちゃんと書いた?」
「書いたよもう。お節介だな」
「まだあと1年半あるとはいえ、進路希望って言葉が出てくるとちょっと引き締まるよなあ」
「そうだね」
「俺公立受かると思う?」
「1年あるんだし、受かるんじゃない?」
「なんだよその他人事みたいな言い方は〜。勉強出来るからって余裕か」
今日からブレザーは着なくてもいい期間。
だから、僕はシャツ1枚で登校した。
晴哉はシャツの中に部活の練習着を着ている。多分この後怒られるまでがセット。
「おーみんなブレザー脱いでるじゃん」
「ブレザーなんか着たい人の方が少ないよ」
教室に入るとすっかり夏仕様になったクラスメイトで賑わっていた。
僕は自分の席にカバンを置いて、椅子を引こうと前屈みになる。
「三月、お前鎖骨どうした?」
「え?」
「なんか、赤いっていうか」
「あ〜これ。僕のヒーローと同じやつ」
「同じやつってそれ、ピアス───」
晴哉の言葉を遮るようにして、教室に入ってきた担任の声が響いた。
「進路希望提出しろー」
「行こ、晴哉」
「いや、三月それ」
「あと、僕こっちにしたから」
真っ直ぐピンと張って重なった紙の上に、僕の紙を重ねた。
ヨレヨレで弱々しい、進路希望調査票。
第1希望に『音楽の専門学校』と記入した。
今日からまた、より一層、小さな光の粒をばら蒔いては集めてを繰り返す毎日になる。
