「まずはゆっくり休め、俺は軍に戻る」
「は、はい。いってらっしゃいませ」
凛子は部屋を去る悠一朗に深々と頭を下げた。
あやかしから人々を守るために、帝都は壁に囲まれている。
地方都市との行き来のために、何ヶ所か門が設置され、その門には護符が貼られている。
凛子が住んでいたのは「西門」と呼ばれる門の近く。
帝都の中では樹海に一番近い門だ。
護符の価値に気づいた彼、悠一朗は、他の門もあの護符にしたいと思ったのだろう。
私の力はあらゆる邪気や災厄を祓う、最強の守護・浄化の力を持つ「麒麟」の力だから。
隙を見て、この屋敷から逃げ出さなきゃ。
正体を知られれば、一族を脅かした権力者たちのような者が現れるだろう。
母は病死だったが、父も叔父もみんな人に捕らえられて亡くなったのだから——。
凛子は静かに部屋を抜け出した。
広大な屋敷の廊下は静まり返り、この部屋には女中たちも立ち寄れないのだと察した。
角を曲がると、扉はあるが残念ながら廊下は行き止まり。
引き返そうと思った凛子は、壁に飾られた絵に目を見開いた。
「……これって」
薄暗い森、赤い鳥居、そして顔が描かれていない金色の髪の女性。
これ、私……?
富士の樹海、古びた鳥居の前、光を散らす黄金の髪。
十五年前に一度会っただけの自分の姿を描いたってこと?
「この先の部屋は、立ち入り禁止でございます」
「あっ、す、すみません」
執事に声を掛けられた凛子はビクッと肩を揺らす。
「あの、迷ってしまって……」
我ながら苦しい言い訳だ。
執事は凛子を責めることなく、絵に視線を送った。
「この絵の女性は、病気だった悠一朗様を救ってくださった方で、悠一朗様の想い人でございます」
「そ……うですか」
「ですので、勘違いなさらぬようお気を付けください」
……勘違い?
って、私があの人に優しくされて絆されるってこと?
「は、はい。いってらっしゃいませ」
凛子は部屋を去る悠一朗に深々と頭を下げた。
あやかしから人々を守るために、帝都は壁に囲まれている。
地方都市との行き来のために、何ヶ所か門が設置され、その門には護符が貼られている。
凛子が住んでいたのは「西門」と呼ばれる門の近く。
帝都の中では樹海に一番近い門だ。
護符の価値に気づいた彼、悠一朗は、他の門もあの護符にしたいと思ったのだろう。
私の力はあらゆる邪気や災厄を祓う、最強の守護・浄化の力を持つ「麒麟」の力だから。
隙を見て、この屋敷から逃げ出さなきゃ。
正体を知られれば、一族を脅かした権力者たちのような者が現れるだろう。
母は病死だったが、父も叔父もみんな人に捕らえられて亡くなったのだから——。
凛子は静かに部屋を抜け出した。
広大な屋敷の廊下は静まり返り、この部屋には女中たちも立ち寄れないのだと察した。
角を曲がると、扉はあるが残念ながら廊下は行き止まり。
引き返そうと思った凛子は、壁に飾られた絵に目を見開いた。
「……これって」
薄暗い森、赤い鳥居、そして顔が描かれていない金色の髪の女性。
これ、私……?
富士の樹海、古びた鳥居の前、光を散らす黄金の髪。
十五年前に一度会っただけの自分の姿を描いたってこと?
「この先の部屋は、立ち入り禁止でございます」
「あっ、す、すみません」
執事に声を掛けられた凛子はビクッと肩を揺らす。
「あの、迷ってしまって……」
我ながら苦しい言い訳だ。
執事は凛子を責めることなく、絵に視線を送った。
「この絵の女性は、病気だった悠一朗様を救ってくださった方で、悠一朗様の想い人でございます」
「そ……うですか」
「ですので、勘違いなさらぬようお気を付けください」
……勘違い?
って、私があの人に優しくされて絆されるってこと?
