「出来上がりました」
凛子は息を吐き出しながら筆を置く。
大きな白い布に一気に躍り出た漆黒の符文に、軍人たちの目に困惑の色が浮かんだ。
もしかして、帝都の護符師は、目の前では書かない?
それともあやかし除けの効果を入れすぎた?
「西門の門扉にちょうど納まる大きさにしておきましたので」
「あぁ、助かる」
軍人はジッと書き上がった護符を見たあと、カウンターに金貨を置いた。
「すまない、持ち合わせがこれだけしかない」
「ちょ、ちょっと待ってください、隊長。護符に金貨なんて……」
小声でもうひとりの男性が「なにやってるんですか」と焦っている。
金貨1枚あればここで1年は暮らしていけるのに、庶民の暮らしを知らないほど高貴な生まれの軍人さんなのかな。
「田沼。この護符の価値はこれでは足りない」
「えぇ? こんな……」
軍人は小さな店をぐるっと見渡す。
「さびれた店ですみません」
「あっ、いや、決してそんな……」
田沼と呼ばれた軍人は気まずそうに凛子に乾いた笑いを返す。
田沼に隊長と呼ばれていた軍人はすっと長身をかがめ、カウンター越しに凛子の顔を覗き込んだ。
「名前は?」
「……凛子、です」
男性の視線は、凛子の顔というよりも、耳元に垂れる黒髪に向いているようだった。
「特務部隊専属の護符師として雇う」
「……え?」
「希望ではない、命令だ」
は? 何を言っているの?
なんで命令?
「逃がさない」
男性の唇が、逃れられない死刑宣告のように冷たく歪んだ。
凛子は息を吐き出しながら筆を置く。
大きな白い布に一気に躍り出た漆黒の符文に、軍人たちの目に困惑の色が浮かんだ。
もしかして、帝都の護符師は、目の前では書かない?
それともあやかし除けの効果を入れすぎた?
「西門の門扉にちょうど納まる大きさにしておきましたので」
「あぁ、助かる」
軍人はジッと書き上がった護符を見たあと、カウンターに金貨を置いた。
「すまない、持ち合わせがこれだけしかない」
「ちょ、ちょっと待ってください、隊長。護符に金貨なんて……」
小声でもうひとりの男性が「なにやってるんですか」と焦っている。
金貨1枚あればここで1年は暮らしていけるのに、庶民の暮らしを知らないほど高貴な生まれの軍人さんなのかな。
「田沼。この護符の価値はこれでは足りない」
「えぇ? こんな……」
軍人は小さな店をぐるっと見渡す。
「さびれた店ですみません」
「あっ、いや、決してそんな……」
田沼と呼ばれた軍人は気まずそうに凛子に乾いた笑いを返す。
田沼に隊長と呼ばれていた軍人はすっと長身をかがめ、カウンター越しに凛子の顔を覗き込んだ。
「名前は?」
「……凛子、です」
男性の視線は、凛子の顔というよりも、耳元に垂れる黒髪に向いているようだった。
「特務部隊専属の護符師として雇う」
「……え?」
「希望ではない、命令だ」
は? 何を言っているの?
なんで命令?
「逃がさない」
男性の唇が、逃れられない死刑宣告のように冷たく歪んだ。
