残った染料で小遣い稼ぎの護符を書く。
家内安全、病気退散、あやかし除け。
麒麟の血を引く凛子が書いた護符は、帝都のどんな有名護符師が書いたものより効果がある。
だが、宣伝する気も、売り込む気もない凛子は、近所に住む人々や旅人が買ってくれればそれでいいと、料金は格安、在庫はほぼなし、店は午後から2時間しか開けなかった。
お店の鈴が、ちりんと控えめな音を立てる。
使い古された格子戸を押し開けて入ってきたのは、軍靴の足音も厳めしい二人組の男たちだった。
「いらっしゃいませ」
こんな店に軍人さんが来るなんて初めてだわ。
深く被った軍帽のひさしから覗く瞳は、生きとし生けるもの全てを拒絶するかのように冷たく澄んでいる。
「結界の護符はあるか?」
「在庫はございません。少々お時間いただければ、今から書かせていただきます」
「では頼む」
そういえば今週は何人か、あやかし除けの護符を買って行った。
普段は一週間に一人なのに珍しいこともあるものだと。
「……西門ですか?」
『軍人さん』『あやかし除けの護符』で考えられる理由はただひとつ。
西門の護符の効果が切れたのだろう。
凛子が尋ねると、軍人は「そうだ」とそっけなく答えた。
「では準備いたします」
帝都の誰かが書いた護符だったが、正直あまり効果がないものだったから、1、2年で破られても当然と言えば当然かもしれない。
凛子は樹海の薬草を煎じた漆黒の染料に自分の血をわずかに混ぜた。
余程のあやかしでない限り、麒麟の血で刻まれたこの結界は越えられない。
私は平和な街に住みたい。
あやかしに頻繁に入られては困るのだ。
凛子は大きな白い布を取り出し、敷物の上に広げる。
筆の穂先を漆黒の染料に付けた凛子は、布の上にいっきに護符を書き上げた。
家内安全、病気退散、あやかし除け。
麒麟の血を引く凛子が書いた護符は、帝都のどんな有名護符師が書いたものより効果がある。
だが、宣伝する気も、売り込む気もない凛子は、近所に住む人々や旅人が買ってくれればそれでいいと、料金は格安、在庫はほぼなし、店は午後から2時間しか開けなかった。
お店の鈴が、ちりんと控えめな音を立てる。
使い古された格子戸を押し開けて入ってきたのは、軍靴の足音も厳めしい二人組の男たちだった。
「いらっしゃいませ」
こんな店に軍人さんが来るなんて初めてだわ。
深く被った軍帽のひさしから覗く瞳は、生きとし生けるもの全てを拒絶するかのように冷たく澄んでいる。
「結界の護符はあるか?」
「在庫はございません。少々お時間いただければ、今から書かせていただきます」
「では頼む」
そういえば今週は何人か、あやかし除けの護符を買って行った。
普段は一週間に一人なのに珍しいこともあるものだと。
「……西門ですか?」
『軍人さん』『あやかし除けの護符』で考えられる理由はただひとつ。
西門の護符の効果が切れたのだろう。
凛子が尋ねると、軍人は「そうだ」とそっけなく答えた。
「では準備いたします」
帝都の誰かが書いた護符だったが、正直あまり効果がないものだったから、1、2年で破られても当然と言えば当然かもしれない。
凛子は樹海の薬草を煎じた漆黒の染料に自分の血をわずかに混ぜた。
余程のあやかしでない限り、麒麟の血で刻まれたこの結界は越えられない。
私は平和な街に住みたい。
あやかしに頻繁に入られては困るのだ。
凛子は大きな白い布を取り出し、敷物の上に広げる。
筆の穂先を漆黒の染料に付けた凛子は、布の上にいっきに護符を書き上げた。
