「少しなら昼寝をしてもいいぞ」
笑いながらお茶を手にした悠一朗は「うまいな」と呟く。
その笑顔でさえ凛子を骨抜きにするには十分だった。
執事の吉雄が時間通りに現れ、いつものように外套と鞄を持ち、階段を降りてエントランスへ。
「いってらっしゃいませ」
凛子もいつも通り女中の列に並んでお見送りをする。
このあとエントランスに横付けされた車に乗り、悠一朗は軍へ向かうはずだったのに——。
「……何事だ?」
屋敷の門の前で待ち構える軍人たちに悠一朗は目を見開いた。
「烏丸隊長、私は護符師を探して軍へ連れてこいと命令しなかったかね?」
門の向こうから年配の男性の声が響く。
玄関扉を閉めるように命じられた吉雄の手によって、外の様子が見えなくなる。
凛子は慌てて扉へと近づいた。
「外へ出てはなりません」
「でも悠一朗様が!」
執事の吉雄は首を横に振る。
女中頭の文乃もダメだと首を振った。
「あっ、凛子さん⁉︎」
「自室に行くだけです!」
急いで部屋に戻った凛子は、指先をわずかに噛み切り、血を染料に混ぜた護符を何枚も書き上げた。
私のせいでこの屋敷のみなさんを、悠一朗様を危険に晒してしまったのだ。
だったらせめて誰も怪我をしないように、私が守る。
護符を持った凛子は急いでみんながいる玄関へ。
「この護符を玄関、裏口、人が入れそうな大きな窓に貼ってください!」
「え……? でも護符はあやかし避け……」
「コレは違います。すべての悪意を跳ね返します」
凛子から護符を渡された吉雄は、その紙片から伝わる尋常ではない温もりと清らかな気配に一瞬目を見開いたが、すぐに凛子へ深く頭を下げた。
笑いながらお茶を手にした悠一朗は「うまいな」と呟く。
その笑顔でさえ凛子を骨抜きにするには十分だった。
執事の吉雄が時間通りに現れ、いつものように外套と鞄を持ち、階段を降りてエントランスへ。
「いってらっしゃいませ」
凛子もいつも通り女中の列に並んでお見送りをする。
このあとエントランスに横付けされた車に乗り、悠一朗は軍へ向かうはずだったのに——。
「……何事だ?」
屋敷の門の前で待ち構える軍人たちに悠一朗は目を見開いた。
「烏丸隊長、私は護符師を探して軍へ連れてこいと命令しなかったかね?」
門の向こうから年配の男性の声が響く。
玄関扉を閉めるように命じられた吉雄の手によって、外の様子が見えなくなる。
凛子は慌てて扉へと近づいた。
「外へ出てはなりません」
「でも悠一朗様が!」
執事の吉雄は首を横に振る。
女中頭の文乃もダメだと首を振った。
「あっ、凛子さん⁉︎」
「自室に行くだけです!」
急いで部屋に戻った凛子は、指先をわずかに噛み切り、血を染料に混ぜた護符を何枚も書き上げた。
私のせいでこの屋敷のみなさんを、悠一朗様を危険に晒してしまったのだ。
だったらせめて誰も怪我をしないように、私が守る。
護符を持った凛子は急いでみんながいる玄関へ。
「この護符を玄関、裏口、人が入れそうな大きな窓に貼ってください!」
「え……? でも護符はあやかし避け……」
「コレは違います。すべての悪意を跳ね返します」
凛子から護符を渡された吉雄は、その紙片から伝わる尋常ではない温もりと清らかな気配に一瞬目を見開いたが、すぐに凛子へ深く頭を下げた。
