イワカンノカンサツ-クスッと系ショートエッセイ集-

お財布の味方1000円カットの
某チェーン理髪店

物価上昇ゆえに1000円越えてしまっても
平日朝10時の開店前から人が並ぶ

「ありがとうございましたー」

が元気すぎて
つられて言いそうになる

客商売やってる人あるあるが
発動するぐらい気持ちの良い挨拶だ

安価で髪切ってもらえるし
態度も良い

時々私もお世話になってるのだが

客層が幅広いなと
行くたびに思う

待ち時間ずっと通話してる人
カットしている所を凝視する人
スマホで物書きする私

なかでも驚いたのが

始める前から
店員に細かく注文つけている男性

あまりに細かく命令口調
どんな人だと顔をあげたら

お爺さんだった

色んな人がいるなと思いながら
スマホへ目を落とした

カットしている最中も
お爺さんの指示が聞こえる

ここを切れ
そこを切るな
整えろ
何やっている!
そこだ

…

「ありがとうございました」

「うむ」

カットがおわる

細かい指示の末
仕上がりがどんなものなのか

顔をあげてしまう私

「…ッ!?」

やる前とやった後
変わっていないお爺さん

失礼なのは重々承知だ

自分の表情筋が
緩んでいくのがわかる

冷静に考えれば

変化はあったはずだ

あったはずなのだ

表情筋に力を入れる
緩めてはいけない

緩めては…

「お待たせしましたー」

表情筋に力を入れたまま
私は断髪台へと向かう