とある少女の物語

静かさをまとう昼休みの図書室に、私は足を踏み入れる。

学校という小さな世界の中で、私にとって唯一、息のできる場所だった。

この時間帯はほとんど人がいないし、いたとしても誰も私を見ていない。

それが、心地よかった。

題名にひかれて手に取った本を眺めていると、不意に声をかけられた。

「それ、すごくおもしろいよ」

それが、宮本澪との出会いだった。

はじめは、なんでこの子は私に話しかけるんだろう、と思った。

私には常にレッテルが貼られていて、そのせいで女子は誰も話しかけてこないのに。

でも、彼女は違った。

私の噂を知っていても、何も変わらずに接してくれた。

「私は『山下乃愛』を知りたいの」

その言葉が、ずっと心に残っていた。

アイドルとしての私でも、噂の中の私でもない。

ただの私を知りたいと言ってくれた人。

そんな人は、初めてだった。

「……うれしい」

気づけば、そうつぶやいていた。

本心を誰かに伝えるのは、いつぶりだろう。

小さいころから、思ったことはすぐに口にしてしまう子だった。

でも、自分の言葉が誰かを傷つけることもあると知った。デマの噂まで流されて、いつしか本心を話すことが怖くなっていた。

友達なんて、いなくてもいい。

そう思っていたはずなのに。

澪と話していると、不思議と、もっと話したいと思えた。

この子なら、ありのままの私を受け止めてくれる。

そう思えた。

気がつくと、二人でいるのが当たり前になっていた。