とある少女の物語

「山下さんってさ、男たらしだよね」

六月。この学校に入学してまだ間もないころ、私にそんな噂が流れた。

同時に、こんな話も出回った。

「アイドルやってるよね? 今人気のMelty♡Candyとして」


最初の話は嘘。あとの話は本当。

でも別に、アイドルをしていることを学校に隠しているわけでもないので、なんてことない。

男たらしと言われても、私は普通に接しているだけだ。

なんでこんな、くだらない噂を流すんだろう。

ずっと、そう思っていた。

噂なんて、信じる人がおかしい。
もし信じている人がいるのなら、私がその噂を塗り替えてやればいい、と。

だから私は、噂が嘘だと証明するために、いろんな人に分け隔てなく話しかけた。

最初は、話してくれる人もいた。

けれど、噂を知った途端、今までのことが嘘のように話してくれなくなった。

そうこうしているうちに、今度は私に彼氏がいるという噂まで流れた。

私が男の子と歩いているのを見たらしい。

「アイドルなのに……」

「噂は本当だったんだ」

そんな言葉が、私の耳に入ってくる。


違う。あれは彼氏なんかじゃない。

そう言っても、きっと信じてくれないだろう。

それどころか、聞く耳すら持ってもらえないんだろう。

あのとき、私が一緒にいたのは双子の弟だ。

その日は、買い物に付き合ってもらっていて……。

ああ、それが駄目だったのか。

外で、男の子と歩いているのがいけなかったんだろう。

クラスメイトたちは、私と一緒にいたのが誰なのか知らない。

噂を好み、それを信じる彼らには、私の口から何を言っても聞き入れてもらえないのだ。

安易に怪しまれるようなことをした私にも、落ち度があった。次からは気をつけなければ。