とある少女の物語

*

「ありがとうございましたー! お疲れさまでしたー!」

番組が終わり、私たちはスタッフさんや出演者の方々に挨拶をして回る。

時刻は午後九時。

本当は帰ってすぐに寝たいところだけれど、お風呂もスキンケアも欠かせないし、課題だって残っている。

……今日も帰ったら忙しそうだ。

そんなことを考えながら、私はりりと一緒に出演者の楽屋へ向かった。

今から、私たちのCDを配りに行くのだ。

コンコン、とドアをノックする。

「どうぞー」

「失礼します。Melty♡Candyの山下乃愛と桃井りりです。今、少しお時間よろしいでしょうか?」

最初に訪れたのは、NEX7の楽屋だった。

「はーい、どうぞー」

中に入ると、メンバーの皆さんが迎えてくれた。

「初めまして、Melty♡Candyの桃井りりです。今日はご一緒できてうれしかったです! これ、私たちの新しいCDなんですけど、もしよろしければ皆さんで聴いてください!」

りりがCDを手渡すと、メンバーの方々も私たちのCDを受け取ってくれた。

「ありがとうございます!」

りりが隣でうれしそうに笑う。

……あ、そうだ。

「あの、すみません。サインをお願いしてもいいですか?」

柊さんに声をかける。

「サイン? いいけど、なんて書けばいいですか?」

「えっと、じゃあ……『澪ちゃん、いつもありがとう』でお願いします」

そう言うと、柊さんは「あー、澪ちゃんね!」と笑った。

サインを書きながら「澪ちゃん、元気にしてるー?」と聞いてくる。

元気ですよ、と答えるとうれしそうに目を細めた。

「おっけー。んー、よいしょっと。はい、どうぞ! 最近は澪ちゃん見ないからなー。
それこそ、駆け出しのころはよく来てくれたんだけどね~。最近はチケット当選上がってるらしいから」

差し出されたCDには、丁寧な文字でメッセージが書かれていた。

「ありがとうございます!」

思わず、顔がほころぶ。

「澪ちゃんによろしくねー」

そう言って、柊さんははにかむように笑った。

「はい! 伝えておきます!」

私はCDを大切に受け取った。

……澪、絶対喜ぶだろうな。

あの子の喜ぶ顔を想像するだけで、こっちまでうれしくなってしまう。

ふふっ。明日、どんな反応をするんだろう。

今から楽しみだ。