冷たい唇、その奥に

 香はいつもガムを噛んでいる。
 わたしにも勧めてきたが、わたしは断り続けた。
 気持ち悪くなるぐらい、甘ったるい匂いのガムだったから。
「ねえねえ、美咲。今度、三年の先輩達とカラオケに行くんだけど、一緒に行かない?」
 ある日、香に誘われた。
 特に断る理由もなかった。
「いいよ」
 わたしは答えた。
 ただ、貴利のことが気になった。
 貴利以外の異性と、何かをしたことがない。
 貴利以外の異性を知らない。